2019年7月2日現在、ビジネス界隈で「ESG投資」という言葉を耳にしない日はありません。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という非財務情報を投資判断に組み込むこの潮流は、単なる流行を超え、資本市場の新たなスタンダードとなりつつあります。しかし、その本質が単なる「良いこと」への投資ではなく、企業の「稼ぐ力」の持続可能性を見極めるための長期的な視点にあることに、どれだけの人が気づいているでしょうか。
企業に求められているのは、不確実な未来を見据えたビジネスモデルの強靭(きょうじん)さです。投資家たちは、足元の中期経営計画の延長線上で未来を語るのではなく、あるべき将来像から現在を逆算して考える「バックキャスト」という思考法を求めています。この手法を用いることで、現状の延長だけでは到達できない革新的なゴールへの道筋を描くことが可能になるのです。
2030年を見据えた「デジタル」と「持続可能性」の融合
多くの企業がこのバックキャストの参照点としているのが、2030年を期限とする国際目標「SDGs(持続可能な開発目標)」です。ここから逆算すると、少なくとも今後10年というスパンでの展望が必要不可欠となります。10年と聞くと短く感じるかもしれませんが、過去10年を振り返ってみてください。スマートフォンの爆発的な普及やSNSによる情報革命を、10年前に誰がこれほど鮮明に予測できたでしょうか。
これからの10年を読み解く鍵として、私が特に注目したいのが「デジタル化」と「サステナビリティ(持続可能性)」という2つの軸の交差です。産業界では今、「XaaS(ザース)」という言葉が注目を集めています。これは「X as a Service」の略で、ありとあらゆるモノがネットワークを通じてサービス化される現象を指します。所有から利用へというこの転換は、産業構造そのものを根底から覆す可能性を秘めているのです。
編集後記:制約こそがイノベーションの母となる
ここで重要なのは、このデジタル革命が、気候変動や海洋プラスチック問題といった「地球環境の制約」の下で進行しているという事実です。一見すると環境配慮は経済活動の足かせのように思えるかもしれません。しかし私は、この制約こそが新たなイノベーションを生む土壌になると確信しています。SNS上でも、「エシカル(倫理的)な消費こそがクールだ」という声が若年層を中心に高まっており、環境意識の高さがブランド価値に直結する時代が到来しているのです。
デジタル技術を駆使して、いかに環境負荷を下げつつ、新たな事業機会を創出できるか。あるいは、環境リスクをどうビジネスモデルに織り込んでいくか。これからの企業経営は、この問いへの回答次第で明暗が分かれることでしょう。激動の2019年、私たちも変化を恐れず、持続可能な未来への感度を高く持ち続けたいものです。
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