2019年7月2日、世界的な半導体(はんどうたい)のサプライチェーンに大きな波紋を広げるニュースが飛び込んできました。日本政府が前日の7月1日、韓国向けの輸出管理を厳格化すると発表したためです。これは、特定の半導体製造に不可欠な材料について、これまでの簡略な手続きから、個別の審査と許可を必須とする措置へと移行させることを意味します。
この規制強化は二段階で進行するとされており、まず
7月4日から、フッ化ポリイミド、レジスト(感光材)、そしてエッチングガス(フッ化水素)という3品目について、個別審査が必要となります。これらの品目はいずれも、高度な集積回路である半導体を製造する過程で欠かせない、日本企業の高い技術力が光る素材です。特にエッチングガス(フッ化水素)に至っては、日本企業が世界の8〜9割という圧倒的なシェアを占めており、代替品の調達は極めて困難であると言われています。
さらに
8月をめどに、韓国を安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定から除外する方針も示されています。「ホワイト国」とは、輸出管理体制が整備されていると日本政府が認めた国々を指し、米国やドイツなど27カ国が指定されていましたが、韓国の指定取り消しが実現すれば、これは初めてのケースとなります。これにより、軍事転用される恐れのある製品の輸出には、原則として許可が必要となるため、事実上の輸出規制が大幅に強化されることになります。
この日本の措置に対し、韓国政府は強く反発し、世界貿易機関(WTO)への提訴を含む対抗措置の検討を表明しています。韓国の成允模(ソン・ユンモ)産業通商資源相は、今回の日本の措置をむしろ韓国の技術力を高める「契機にする」と前向きな姿勢も見せていますが、その影響は甚大です。デロイトトーマツコンサルティングの羽生田慶介執行役員は「日本が自主的に判断して良い分野」であり、WTOルールには抵触しない可能性が高いとの見解を示しています。一方で、早稲田大学の福永有夏教授からは「WTO協定違反の疑いもあるグレーな措置」との指摘も挙がっており、国際的な議論を呼ぶ可能性をはらんでいます。
今回の規制強化が最も懸念されているのが、世界の半導体市場への影響です。韓国は、データを保存するメモリー半導体の分野で圧倒的な存在感を誇り、
DRAM(ディーラム)では世界シェアの約7割、NAND型フラッシュメモリーでは約5割を韓国勢が占有しています。世界首位のサムスン電子、第3位のSKハイニックスという巨頭が韓国に本拠を置いており、スマートフォンやテレビ、パソコンなど、幅広い電子機器に韓国製のメモリー半導体が搭載されているのです。
日本企業による輸出の審査にかかる標準的な期間は約3カ月とされていますが、規制対象の材料在庫は通常1〜2カ月分程度だと言われています。SKハイニックスの関係者は、日本経済新聞の取材に対し、同社の在庫量は「3カ月は無い」とコメントしました。さらに、「追加調達ができず3カ月が過ぎれば、工場の稼働は停止するのか」という問いに対し、「そうだ」と回答しており、工場の操業継続に深刻な懸念を抱いている状況が明らかになりました。これにより、もし韓国からのメモリー半導体の供給が滞れば、世界の電機メーカー、例えばアップルのiPhone生産にも影響が及び、結果的に日本の部品供給網にも連鎖的な影響が出る可能性があると、ある日本の電機大手は危惧しています。
読者の皆様のSNSでの反響を見てみますと、「半導体不足が世界に広がるのではないか」「自分のスマホの価格に影響するのでは」といった、サプライチェーンの途絶に対する不安の声が多く見受けられます。一方で、「日本の技術力を改めて認識した」「日本政府の毅然とした対応は当然」という意見もあり、今回の措置に対する賛否が分かれている状況です。サムスン電子は「状況を精査している」と具体的な言及を避けていますが、両国の企業の動向から目が離せません。
編集者として、私は今回の輸出規制強化は、両国の経済関係だけでなく、世界経済全体に与える影響の大きさを鑑みるに、非常に重要な局面であると考えます。半導体は現代社会の「産業の米」であり、その安定供給は不可欠です。政治的な緊張が経済活動にまで及び、最終的に世界中の消費者に影響を与える事態は避けるべきでしょう。しかし、安全保障上の輸出管理という側面も理解でき、そのバランスを取る難しさを痛感いたします。今回の措置が、世界的な半導体サプライチェーンの再構築を促す契機となるのか、あるいは長期的な混乱を招くのか、今後の動向を注視していく必要があるでしょう。
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