2019年7月1日、日本政府は韓国に対する半導体材料などの輸出管理を厳格化すると発表しました。これは、かねてより日本と韓国の間で深刻な対立点となっていた「元徴用工」に関する韓国最高裁判所の判決に対し、韓国政府が具体的な対応策を示さないことへの、事実上の対抗措置とみられています。この措置は、両国間の信頼関係に基づいた輸出管理の実施が困難になったとの日本政府の判断によるものです。内閣官房副長官の西村康稔氏は同日の記者会見で「韓国との信頼関係のもと、輸出管理に取り組むことが困難になった」と説明しています。この動きは、関係改善に向けた取り組みをしなければ経済的な不利益が生じることを示唆し、韓国政府に対応を迫る狙いがあると考えられます。
この対立は、韓国最高裁判所が2018年10月に日本製鉄(当時の新日鉄住金)に対して元徴用工への賠償を命じる判決を下して以降、急速に悪化の一途をたどっています。日本政府は、1965年に締結された日韓請求権協定により、戦後の賠償問題は「完全に、かつ最終的に解決済み」という立場を一貫してとっています。そのため、日本側は2019年1月から協定に基づいた政府間協議を要求してきましたが、韓国側はこれに応じていません。さらに、7月18日を期限として、第三国を交えた仲裁委員会の設置も要請している状況です。
一方で、韓国政府は、両国の企業が自発的に資金を拠出して原告と和解するという案を提示しましたが、日本政府はこれを拒否しました。外務省幹部からは、戦後処理の問題で韓国に対してだけ特別な対応をとることは、「悪しき前例」(あしきぜんれい)となり、今後の外交に不利益を及ぼしかねないという懸念が示されています。また、日本政府は6月にも、韓国から輸入されるヒラメなどの水産物に対して検疫を厳しくする措置を導入しており、日韓関係の悪化を背景とした経済的な実害がじわじわと現れ始めています。
日韓関係の現状と積み重なる懸案事項
両国の間には、この元徴用工問題以外にも、解決の糸口が見えない様々な懸案が積み重なっており、日韓関係は「袋小路」に迷い込んだ状態です。その一つが「従軍慰安婦問題」です。2015年12月、日韓両政府は、この問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認し、その合意に基づき「和解・癒やし財団」が設立されましたが、この財団はすでに解散が決定されています。
また、安全保障の分野でも、2018年12月に発生した韓国海軍による海上自衛隊機への「火器管制レーダー」照射事案は、両国の主張が激しく対立したままで解決に至っていません。火器管制レーダーとは、艦艇や航空機などがミサイルや砲弾などの兵器を発射する際に、目標を正確に捉え、追尾するための高性能なレーダーシステムのことです。これを照射することは、相手への攻撃を予告する行為とも受け取られるため、大きな問題となりました。
さらに、福島第一原発事故後に韓国が実施している日本産水産物の輸入規制についても、両国の対立は続いています。日本は世界貿易機関(WTO)で2019年4月に敗訴したものの、敗訴の要因は手続き上の問題であり、食品の安全性自体は認められたとして、韓国に対し規制の解除を求めています。しかし、韓国側はこれに応じず、協議が進んでいない状況です。
首脳会談の欠席と日本政府の「ホワイト国」指定削除の動き
首脳間の対話も途切れがちです。2019年6月に大阪で開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に際し、韓国の文在寅大統領は安倍晋三首相との首脳会談を求めましたが、首相はこれに応じませんでした。議長国として出迎えた際の短い握手のみに留まり、両国首脳の間の冷え込みを象徴する出来事となりました。また、6月に岩屋毅防衛相が韓国の鄭景斗国防相と非公式に会談した際には、自由民主党内から会談を批判する声が上がったと報じられており、日本側の毅然とした姿勢を求める意見が党内でも高まっていることがうかがえます。
そして、今回の輸出管理強化に加えて、日本政府が検討しているのが「ホワイト国」の指定から韓国を削除する措置です。「ホワイト国」とは、輸出管理体制が適切だと認められた国に対して、特定の品目について輸出の手続きを簡略化する優遇措置を適用する制度です。この指定を削除すべきだという意見は、自民党の外交部会でも出ており、今回の一連の対抗措置は、日本政府の強い意志を示すものと言えるでしょう。
韓国の資産売却と今後の見通し、そしてSNSの反響
当初、夏ごろと見られていた韓国の元徴用工原告団による日本企業の保有資産の売却手続きは、早くても2019年末から2020年1月ごろにずれ込む見通しです。これまでの日本政府内には、日本企業が実際に損害を被るまでは対抗措置を取らず、韓国政府の対応を待つという考え方もありました。しかし、今回の輸出管理強化措置は、資産売却という「実害」が生じる前に、関係悪化の原因となっている韓国側の不当な対応に強く釘を刺し、事態の打開を促す狙いが込められていると考えられます。
この日本の対抗措置のニュースは、SNSでも大きな反響を呼んでいます。多くのユーザーが「日本政府の対応は当然だ」「今までが甘すぎた」といった意見を述べており、日本政府の毅然とした姿勢を支持する声が目立ちます。一方で、「経済的な対立は両国にとってマイナスだ」「対話の窓口を閉ざすべきではない」といった、冷静な議論や関係悪化への懸念を示すコメントも見受けられます。今回の輸出管理強化は、日韓両国の世論にも大きな影響を与え、外交の行方に注目の集まるところです。
コメント