2019年7月2日までに、国の政策を実現するために設立された官民ファンドのうち、特に赤字が目立つ4組織の2018年度決算が明らかになりました。これらのファンドの合計累積損失、すなわち利益剰余金のマイナス額は、前年度末と比較して約6割も増加し、367億円という巨額に膨らんでいます。公的な性格上、すぐに投資を回収することは難しい面がある一方で、現場レベルでは計画的ではない場当たり的な投資が行われ、損失を拡大させているという懸念が持ち上がっている状況です。これにより、ファンドの運営における責任体制の明確化、つまりガバナンスの改革が喫緊の課題となっています。
なかでも、コンテンツ産業やアパレル事業など、日本の魅力を海外に発信する「クールジャパン」を支援する海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)の累積損失が最も大きく、2019年3月末時点で179億円に上っています。これは2018年3月末の97億円から大幅な増加です。これらのファンドの主な資金源は国の財政投融資であり、損失が膨らみ続ければ、最終的には国民の税金からなる国の損失につながってしまうため、その運用には国民の厳しい目が注がれるべきでしょう。この問題についてSNSでは、「国民の税金を無駄にしないでほしい」「投資の専門家がいないのではないか」といった、ファンドの運営体制に対する厳しい批判や、今後の見直しを求める意見が多く見受けられます。
ファンドは基本的に、長期的な視点での投資を前提としています。例えば、農業関連への投資を行う農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)の光増安弘社長は、「リターンが得られるまでの期間は累積損失が生じやすい」との見解を示されています。しかし、投資案件の選定眼、つまり「目利き」の能力と、運用に失敗した際の責任の所在が曖昧なままであれば、ファンドという仕組み自体が適切に機能しているのか、疑問符がつくことになりかねません。私は、長期投資を理由に損失を容認するのではなく、投資判断の過程を透明化し、プロフェッショナルな視点での厳格な評価基準を設けるべきだと考えます。
現場では、投資のあり方に関する不満も噴出しています。北海道余市町のオチガビワイナリーは、2013年にA-FIVEから出資を受けましたが、落希一郎専務によると、当初5年間はブドウの木が未熟なため利益を出すのは難しいと説明したにもかかわらず、担当者から創業1カ月での利益達成や農業従事者のリストラといった、現実的ではない要求をされたそうです。落専務は、この経験から「本気で農業を育てるファンドマネジャーが不在だ」と感じたといいます。同社は結果として、2017年にA-FIVEの全株式を買い戻す決断をいたしました。この事例は、現場の事情や本質的な成長プロセスを理解せず、性急な成果だけを求めるファンド運営の問題点を浮き彫りにしています。
不透明な運用と経営陣刷新の動き
A-FIVEでは、ガバナンスの欠如が疑われる事態も発生しています。2019年6月に開催された株主総会では、辞任した役員への退職慰労金の支給判断が延期されました。これは、2018年に破綻した出資先に対し、A-FIVEが独断で覚書を交わしていたことが発覚し、農林水産省が調査を指示していたという背景があるためです。このような不透明な事態は、ファンドに対する信頼を大きく損なうものであり、徹底した原因究明と責任の明確化が求められます。
一方、巨額の損失を抱えるクールジャパン機構では、経済産業省の指導を受け、2018年6月の株主総会で経営陣の刷新が行われました。新社長の指揮のもと、同社は従来の投資方針を5つにわたって全面的に見直し、より確実な資金の流れ、すなわちキャッシュフローを重視する運用へと転換を図っています。これは、これまでの行き過ぎた投機的な投資姿勢を是正し、より堅実な事業育成を目指すという強い意志の表れであると評価できます。投資の目的が、最終的に国民経済に資する成果を生み出すことにある以上、この転換は正しい方向性であると考えます。
日本は、新しい産業の種、すなわちベンチャー企業などを育てるための投資が欧米諸国と比較して少ないため、起業家精神を持つ人材が育ちにくい環境にあるといわれています。ファンド本来の役割は、単に資金を提供する「渡したら終わりの補助金」とは異なり、投資先企業の経営に深く関与し、指導や支援を行う「ハンズオン」を通じて、企業価値を高めていくことにあります。民間だけではリスクが高くて手が届かない分野において、官民ファンドがその重要な役割を果たすためには、まさに各組織のガバナンス、つまり組織統治体制の抜本的な改革と、プロフェッショナルとしての自覚を持った人材の登用が不可欠であると言えるでしょう。
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