📱デジタル革命が世界政治を変えた!G20で見た「一国主義」の深層と日本の課題

2019年6月28日から29日にかけて大阪で開催されたG20サミットは、まさにデジタル外交の最前線となりました。その象徴的な出来事として、最終日の朝、ドナルド・トランプ米大統領が自身のTwitterアカウントを通じて米朝首脳会談の開催を呼びかけ、その調整過程までも自ら明らかにしたことが挙げられます。世界中の政府関係者は、一般のインターネットユーザーと同じように、週末の2日間にわたってTwitterの動向を注視することになったのです。

このような「デジタル政治」への転換は、今から12年前の2007年に大きな節目を迎えていたと分析できます。当時の安倍晋三首相が後に「悔やんでも悔やみきれない」と述懐した参議院選挙があった年です。この時期は、Appleが初代iPhoneを発表したばかりで、まだ物理キーボードを搭載したBlackBerry(ブラックベリー)がアメリカでは主流でした。その中で、大統領選挙候補者による討論会が始まっていたのです。

2007年5月、共和党の討論会が開かれたサウスカロライナ州コロンビアの上空に、一台の飛行船が異彩を放っていました。その垂れ幕には「Ron Paul For President(ロン・ポールを大統領に)」というメッセージが掲げられていたのです。彼は、イラクからの米軍撤退や外国の事柄への不介入、つまり「放っておけばいい」という、今でいう「一国主義(自国の利益を最優先し、国際協調よりも独自路線を歩む考え方)」を主張する当時71歳の下院議員でした。このデモンストレーションは、彼の支持者によるものでした。

飛行船を飛ばすには多額の資金が必要ですが、ポール氏には翌年の大統領候補者であるジョン・マケイン氏に匹敵するほどの政治資金が集まりました。ポール氏が、従軍慰安婦問題の謝罪を求める下院決議に反対したのも、親日的な理由からではなく、「これはアメリカの問題ではない。我々の仕事は自国を良くすることだ」という一国主義的な信条に基づいていたのです。単一の争点に熱狂的に賛同する姿勢、自国第一主義、そして70代の少々風変わりなキャラクターへの共感。これらは、2019年時点のトランプ大統領に対する支持層と非常に類似しています。「トランプのアメリカ」の原型は、この時すでに現れていたと言えるでしょう。

当時、まだインターネット世論の影響力は現在ほど大きくなかったため、ポール氏への熱狂は、ギーク(Geek、つまりデジタル技術に強く、社会のハイレベルな層)の一部に限られていました。世論調査の支持率は一桁台にもかかわらず、インターネット上での支持は他の候補者を圧倒していたという興味深い状況です。彼は、この年に発売されたばかりのiPhoneを初めて利用する議員としても話題になったのです。

高性能なコンピューターが個人の手のひらに収まる時代は、iPhoneに代表されるスマートフォンによって実現しました。この革新的なデバイスは、またたく間に一般層へ普及していきます。このアメリカ発のデジタル革命は、世界政治の景色を一変させる原動力となったのです。たとえば、アメリカ建国史上初の黒人大統領となったバラク・オバマ氏の誕生も、デジタルツールを駆使した選挙運動が一因とされていますし、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動や、**ポピュリズム(大衆迎合主義。一般大衆の感情や願望に訴えかけて支持を得ようとする政治手法)**政党の伸長にも影響を及ぼしました。

個々人の嗜好に深く没入できるデジタル空間の特性は、政治的な志向も右派・左派の両極端に分かれやすくする傾向があります。そして、スマートフォン市場の急成長と歩調を合わせるかのように、「自国第一」を掲げる一国主義が世界で勢力を増していったのです。この一国主義は、国家間で力による覇権争いを誘発する「新帝国主義」とも呼ばれる状況を生み出し、その決定版として「アメリカ第一」を旗印とするトランプ政権が登場しました。

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デジタル化の波に乗り遅れた日本の政治

このような世界の潮流の中で、日本の政治家たちはデジタル空間で起こる現象や動向を、残念ながら「現実のもの」として十分には捉えられませんでした。日本には、デジタル化への対応で二度の大きな挫折があったと指摘できます。世紀が変わろうとしていた2000年、小渕恵三首相は次なる政策課題としてデジタル革命に照準を合わせました。金融危機の中で低支持率からスタートした小渕内閣は、常に新しい政策のアイデアを模索しており、ソニーの幹部らと意見交換を行い、政官主導の時代に民間企業の要望を取り入れて、トップダウンで一気に物事を進めようとしました。彼は自民党郵政・通信族の重鎮としての自負も持っていたのです。

しかし、志半ばで小渕氏は病に倒れ、同年5月に逝去されます。その後の郵政・通信族は、NTTドコモの「iモード」を基盤とした独自の取り組みで世界制覇が可能だと楽観視してしまいました。その結果、小渕氏が抱いていたデジタル革命への深い問題意識は、どこかへ消え去ってしまったと言わざるを得ません。また、同じ年の11月に、加藤紘一氏が内閣不信任決議案を提出して森喜朗内閣を倒そうとした「加藤の乱」も、政治とデジタルの距離を遠ざける大きな要因となりました。

インターネット世論に後押しされた加藤氏の試みが失敗に終わったことは、永田町の旧来の政治家たちに「ネットは危険で信用しなくても大丈夫だ」という誤った安心感を与えてしまいました。その結果、日本の政治は、デジタル化をプラス面での産業政策として推進する視点でも、また、社会の分断や一国主義の進展という負の側面を認識する点においても、世界から決定的に後れをとることになったのです。

この世界的な遅れは、トランプ政権の登場によってようやく日本政治の目を覚まさせました。たとえば、世界的に高価なiPhoneが、なぜ日本国内では約5割もの高いシェアを占めているのか。携帯電話の通信料金4割引き下げを主導する菅義偉官房長官が問題視しているのは、GAFA(ガーファ)と呼ばれる巨大IT企業、すなわちデジタルプラットフォーマーと国家がどのように向き合うべきかという、国家戦略に関わる大きな課題にあります。

自民党の甘利明選挙対策委員長も、サイバー、経済、安全保障を統合的に考える提言をまとめました。政権中枢にいるこの二人の政治家を突き動かしているのは、「このままでは10年、20年の後れを取り戻すことはできない」という強い危機意識に他なりません。ロン・ポール現象から12年が経過した今、2019年7月4日に公示される参議院選挙を取り巻く政治潮流は、当時と比べてさらに速度と深度を増しています。右派・左派を問わず、ポピュリズム的な動きも顕在化し始めている状況です。

第1次安倍内閣の選挙が「消えた年金」問題一色に染まっていた2007年には、デジタル化が政治に与える影響について、日本国内ではほとんど意識されていませんでした。しかし、この度の参議院選挙は、世界的な政治潮流の中で日本がどのような針路を取るべきか、そしてデジタル政治の持つ負の側面に、私たちはどう対処していくべきかを深く考える、まさに絶好の機会となるでしょう。

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