液化石油ガス、通称「LPガス」業界に革新の波が押し寄せています。その中心にいるのが、大手LPガス供給会社である日本瓦斯、略してニチガスです。同社は、ガスの使用量を遠隔で把握できる画期的な機器を開発し、2020年度(令和2年度)から他のLPガス会社への外部販売を開始する方針を打ち出しました。これは、全国に約1万8,000社もあるLPガス事業者にとって、非常に大きなニュースだと言えるでしょう。
ニチガスが開発したのは「NCU(ネットワーク制御装置)」と呼ばれる機器です。このNCUをLPガスのボンベに取り付けることで、ガスの使用量やガス漏れの異常といった重要な情報を、無線通信を用いてLPガス会社へ自動で送信できるようになります。ニチガス自身も2020年度から、全顧客およそ85万件への導入を進める計画で、この技術への自信が伺えます。
これまでのガスの検針は、毎月1回、作業員が各家庭を訪問してメーターを確認するのが一般的でした。しかし、このNCUの最大の特長は、なんと1時間単位での通信が可能である点です。これにより、LPガス会社はボンベ内の残量を極めて正確に、かつリアルタイムで把握できるようになります。ボンベ交換のタイミングを緻密に予測できるため、配達員を効率よく必要な場所に派遣できるようになり、検針と交換作業の両面で大幅な効率化が期待できるのです。
LPガス業界では現在、高齢化に伴う作業員の人手不足が深刻な問題となっています。特に地方では、ガスの供給を支える人材の確保が難しくなりつつあり、安定供給の維持に懸念が生じていました。そのような状況下で、この遠隔検針・残量把握の技術は、まさに人手不足を解消するための切り札となり得るでしょう。
このようなエネルギー設備の遠隔検針技術は、これまで東京電力ホールディングスが次世代電力計「スマートメーター」を展開するなど、資本力のある電力業界が中心となって導入を進めてきました。スマートメーターとは、デジタルで電気の使用量を計測し、通信機能で電力会社にデータを送ることで、検針や料金計算を自動化する仕組みのことです。2019年5月末時点で、東電管内の顧客の7割超に設置されているほど普及が進んでいます。
なぜLPガス業界でも遠隔検針が本格化してきたかと言いますと、背景には通信技術の目覚ましい進歩があります。「LPWA(Low Power Wide Area)」という、電力をほとんど消費せずに広範囲をカバーできる通信技術などが向上したことで、LPガスや水道といった分野でも、コスト効率の良い遠隔検針の技術開発が本格化してきたのです。富士通もLPガス向けのNCU開発を進めており、2019年度末までにガス会社やメーター製造業者への展開を目指すなど、この分野への注目度は高まる一方でしょう。
SNSでの反響と業界への期待
このニチガスの発表を受け、SNS上では「配送効率が上がるのは、消費者側にとっても値上がりの抑制につながるのでは?」「地方のガス会社にとって朗報だ」「ボンベの交換頻度が多い事業者ほど恩恵は大きいだろう」といった、期待や歓迎の声が多く寄せられています。特に、人手不足に悩む地方の事業者からの関心は非常に高いと見られます。
私の意見としましては、このニチガスの取り組みは、LPガス業界の抱える構造的な問題を技術の力で解決しようとする、非常に先駆的かつ重要な一歩だと評価しています。LPガスは、地震などの災害時に復旧が早いというメリットを持ち、都市ガスが届かない地域には不可欠なエネルギー源です。その安定供給体制を維持し、将来にわたって事業を継続していくためには、作業の効率化は避けて通れません。
ニチガスのNCUが広く普及し、業界全体のインフラとして機能すれば、人件費や配送コストの削減を通じて、結果的に消費者の負担軽減にもつながる可能性を秘めています。この遠隔検針技術が、LPガス業界の「デジタルトランスフォーメーション」(DX)を加速させる、起爆剤となることを強く期待する次第です。
コメント