将来の資産形成を担う柱の一つである確定拠出年金(DC)の運用成績が、悪化傾向にあることが明らかになりました。格付投資情報センター(R&I)が2019年7月2日に発表したデータによると、2018年度末までの通算運用利回り(年率換算ベース)は1.86%となり、前年度から約0.6ポイントも低下したのです。これは、実に3年ぶりの低水準となる結果です。DCは、加入者自身が運用方法を選び、その成績によって将来受け取る年金額が変わる制度ですから、この数字は多くの方にとって無視できないでしょう。
この運用成績の低下は、主に株式相場の下落が影響していると分析されています。特に、2018年度にかけて激化した米中貿易摩擦や、世界第2位の経済大国である中国の景気減速懸念が、日本の株式市場に重くのしかかったことが背景にあるようです。R&Iは、野村証券、みずほ銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行といった大手4社の運営管理機関から、「企業型」DCの加入者データ(約408万人分)を集計しました。これは全加入者の約6割を占める、非常に大規模な調査に基づいた結果と言えるでしょう。
2018年度単年度に限定した利回りは0.40%と、かろうじてプラスを確保しています。しかし、その前年度の3.25%と比較すると大幅に悪化しており、その影響が累積の利回りにも及んだ形です。海外株式や国内外の債券など、一部の資産は堅調な運用成績を見せたものの、国内の株式の不振が全体の足を引っ張ってしまった、と言えそうです。この結果は、「自分で作る年金」であるDCの運用における、リスク管理の重要性を改めて浮き彫りにしています。
運用の「二極化」が鮮明に!半数の加入者が利回り1%未満という現実
加入者ごとの運用成績をさらに詳しく見てみると、運用の「二極化」が進んでいる様子が鮮明です。例えば、運用利回りが3%以上を達成した層は、前年度から11ポイントも減少し、26%にとどまりました。その一方で、全体の約半数もの加入者が、利回りが1%未満という厳しい成績になっているのです。SNSなどでは、「マイナスになっていないだけマシだが、このままでは老後が不安」「運用ってどうしたらいいのか本当に分からない」といった、戸惑いや懸念を示す声が多数見受けられます。
なぜこれほどまでに低利回りの加入者が多いのでしょうか。その大きな要因として指摘されているのが、DCの運用資産において、元本が保証されている元本確保型の金融商品、つまり預貯金や保険といった商品が多く組み入れられている実態です。元本確保型は市場の変動リスクを避けられる反面、当然ながら得られる収益(利回り)は非常に低くなります。将来の年金額を増やしていくためには、ある程度のリスクを取って、より収益性の高い国内外の株式や債券の投資信託といったリスク性資産への組み入れを増やし、運用商品の多様化を図ることが喫緊の課題と言えるでしょう。
私自身の考えとしても、DC制度の理念を最大限に活かすためには、加入者一人ひとりが、自身のライフプランやリスク許容度に基づいた**資産配分(アセットアロケーション)**を真剣に考えるべき時期に来ていると考えます。2019年7月現在、市場の不確実性が高まる中で、ただ元本確保型に頼るのではなく、専門家の助言も活用しながら、リスク性資産と元本確保型をバランス良く組み合わせることで、長期的な視点での安定的な資産形成を目指すことが賢明な選択となるでしょう。
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