スマートフォンの画面を彩るアプリの存在は、今や私たちの生活やビジネスにおいて欠かせないインフラとなりました。しかし、これまでは一つのアプリをゼロから構築するために、数千万円という莫大な予算と専門的なプログラミング技術が必須だったのです。そんなIT業界の「当たり前」を鮮やかに塗り替えているのが、2013年に産声を上げた株式会社ヤプリです。同社が展開するプラットフォームは、専門知識がなくても直感的な操作でアプリを制作できる画期的な仕組みを提供しています。
この驚くべきサービスを牽引する庵原保文社長は、さらなる事業拡大を見据え、2019年06月にはベンチャーキャピタルなどから総額約30億円という大規模な資金調達を実施したことを明らかにしました。このニュースはSNS上でも「アプリ開発のハードルが劇的に下がる」「SaaS銘柄として期待大」と、大きな期待を込めて語られています。今回の調達によって、ヤプリは単なる制作ツールを超え、企業のマーケティングを根本から変える強力なエンジンへと進化を遂げようとしているのです。
近年、アパレルや小売業界では、大手モール型サイトに依存するのではなく、自社の独自性を打ち出したアプリへの移行が加速しています。ヤプリの新機能は、ウェブサイトとアプリを滑らかに連携させることで、ユーザーがストレスなく買い物に没頭できる環境を実現しました。これまではウェブページをそのまま映していた手法から脱却し、アプリならではの俊敏な操作性を備えることで、一社あたりの売上を最大化させる戦略は、今の市場ニーズに完璧に合致していると言えるでしょう。
SaaSがもたらす価格破壊と、手厚いサポートが生む「解約率1%」の衝撃
ヤプリの最大の特徴は、インターネットを通じてソフトウェアを月額制などで利用する「SaaS(サース)」というビジネスモデルにあります。これまでは外部のシステム会社に2,000万円以上を支払って開発していたアプリが、ヤプリを利用すれば初期費用200万円程度からスタートできるのです。この約10分の1という「価格破壊」とも呼べるコストパフォーマンスは、日本取引所グループや青山学院大学といった、業界の垣根を超えた300社以上の導入実績に繋がっています。
また、IT人材の不足に悩む企業にとっても、ヤプリは救世主のような存在です。単にツールを提供するだけでなく、顧客がアプリを使いこなせるよう伴走するサポート体制が、1%以下という驚異的な解約率の低さを支えています。売上高も前年比2倍という猛烈なスピードで成長しており、庵原社長は今後3年以内に導入社数を1,000社にまで伸ばすという、非常に強気かつ現実味のあるビジョンを掲げています。この勢いは、まさに現在の日本のデジタル化を象徴しています。
さらに、私が注目しているのはヤプリが提案する「社内の働き方改革」への応用です。例えば、大手企業のダスキンでは、アプリを通じて本部の情報を現場の販売員へ直接届けることで、会議そのものを不要にし、年間数千万円もの経費削減に成功しました。デジタルツールを単なる販促手段ではなく、組織のコミュニケーションを最適化するインフラとして活用する視点は、今の日本企業が最も必要としている「生産性向上」の正解の一つではないでしょうか。
あえて上場を急がない決断!「攻めきる」姿勢が描く壮大な成長シナリオ
2019年中の上場を視野に入れていた同社ですが、投資家からの助言を受け、あえて今は「攻めの先行投資」に舵を切る決断を下しました。未上場であっても巨額の資金が集まる現在の環境を最大限に活かし、企業価値を圧倒的に高めてから市場に挑むという戦略です。目指すべき姿として語られるのは、カナダの巨人「ショピファイ」です。世界的な成功を収めたEC基盤のように、ヤプリもまた、あらゆる企業のビジネス基盤となるポテンシャルを十分に秘めています。
調達した30億円の使い道にも迷いはありません。東京・六本木のオフィスを4倍に広げ、開発エンジニアを200人規模まで増強する計画です。また、テレビCMなどの大規模な広告宣伝も検討されており、さらなる認知度向上が期待されます。もちろん、投資効率の維持という課題は常に付きまといますが、庵原社長が見据える「アプリの民主化」が実現すれば、私たちのスマートフォン体験はより豊かで便利なものへと劇的に進化していくに違いありません。