「まずい、もう一杯!」という強烈なフレーズで、かつて日本中に青汁旋風を巻き起こしたキューサイ。そんな同社が今、かつてのキャッチコピーに代わる強力な武器として「人工知能(AI)」を導入し、通販業界に革命を起こしています。2019年07月02日現在の最新トピックとして、NTTデータと共同開発したAIが導き出した番組構成により、電話での問い合わせ数が従来比で約3割も増加するという驚きの成果を収めているのです。
今回のプロジェクトで主役に抜擢されたのは、中高年の膝の悩みに寄り添う「ひざサポートコラーゲン」という機能性表示食品です。機能性表示食品とは、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁に届け出された食品を指します。健康への関心が高い層をターゲットにする中、同社は2012年から2018年までの7年間にわたる膨大な放送データと入電実績をAIに学習させ、科学的なアプローチを開始しました。
常識を打ち破るAIの「起承転結」無視という選択
2002年にテレビショッピングへ参入した当初、同社の苦労は絶えませんでした。初めての放送では電話が一本も鳴らないという厳しい現実を突きつけられたそうです。そこから、利用者の日常を描くドキュメンタリー形式へとたどり着き、試行錯誤を繰り返してきました。しかし、29分の番組を一本制作するには検証を含めて5ヶ月もの月日を要します。このPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善の循環)を加速させることが、AI導入の大きな狙いでした。
AIが弾き出した数千通りの構成案の中から選ばれたのは、人間のディレクターでは到底思いつかないような意外なものでした。通常、通販番組には「愛用者の声」から始まり「商品解説」「価格提示」へと続く黄金のセオリーが存在します。しかし、AIはあえてその「起承転結」を崩す構成を提案したのです。現場の担当者は当初、その異色な流れに戸惑いと不安を隠せなかったといいますが、2018年07月に放映を開始すると、瞬く間に数字が跳ね上がりました。
特筆すべきは、従来の手法で最も成績が良かった映像と比較しても、入電件数が27.6%もアップしたという事実です。SNS上でも「最近のキューサイのCM、なんだか目が離せない構成になっている」といった、視聴者の違和感が興味に変わったような反応が見受けられます。なぜこの構成が受けるのか、その理由はAI内部の複雑な計算(ブラックボックス)により明確には判明していませんが、予定調和を裏切る新鮮さが、視聴者の心を掴んだのでしょう。
効率化の先にある「お買い物体験」の未来
私は、この取り組みこそが現代のマーケティングの理想形だと感じています。制作者の「経験と勘」に頼りすぎず、データという客観的な指標を信じる勇気が、企業の成長には不可欠だからです。一方で、AIが効率化を担うことで、人間はよりクリエイティブな「新しい素材作り」に集中できるようになります。これは単なるコスト削減ではなく、より質の高いコンテンツを生み出すための、前向きな働き方改革であると言えるのではないでしょうか。
キューサイは現在、2019年夏に向けて新しい体験談の撮影を進めており、さらなる最適化を目指しています。今後は15分番組や短尺のCM、さらには新聞広告といった他媒体にも、このAI分析を広げていく展望を描いています。デジタルの力を駆使しながら、電話という温かみのある対話を大切にする。そんな同社の姿勢は、AIが単なる計算機ではなく、人と人を結びつける「縁の下の力持ち」になれることを証明しているようです。
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