2019年07月01日、日本銀行静岡支店が発表した6月の県内企業短期経済観測調査、通称「日銀短観」の結果は、地域経済の先行きに不透明感を感じさせるものでした。景況感を示す業況判断指数(DI)は、全産業で前回から6ポイント下落のプラス5を記録し、2四半期連続の悪化を露呈しています。これは「景気が良い」と答えた企業から「悪い」と答えた企業を引いた値であり、プラス圏は維持しているものの、成長の勢いが鈍化していることは否定できません。
今回の景況感悪化の背景には、深刻な米中貿易摩擦や世界的な経済減速が影を落としています。特に静岡県のお家芸ともいえる製造業へのダメージが大きく、DIは7ポイント低下のプラス2まで落ち込みました。SNS上でも「地元の基幹産業がこれだけ冷え込むと、生活への影響が心配」「輸出頼みの構図が浮き彫りになった」といった不安の声が目立っており、県民の関心の高さが伺えます。世界情勢の荒波が、ダイレクトに静岡の現場を直撃している格好です。
主力産業を襲う世界景気減速の波と設備投資の光
県内の主力である生産用機械や自動車、二輪車関連の業種は軒並み悪化しており、製造業全体の10業種のうち半数がマイナスを記録しました。例えば工作機械を手掛ける企業では、欧州市場の販売鈍化を受けて業績予想を下方修正する動きも出ています。こうした「実体経済の冷え込み」は、現場の経営者の言葉からも痛いほど伝わってきます。工場自動化の専門家からは、特に自動車業界向けの商談が急激に停滞しているという、生々しい危機感が語られました。
一方で、希望の光が全くないわけではありません。2019年度の設備投資計画は、前年度比で10.6%増加する見通しとなっています。これは、AIやロボットを活用した技術革新への対応や、深刻な人手不足を補うための生産性向上投資が欠かせないためでしょう。目先の景気は厳しくても、将来の生き残りをかけた攻めの姿勢を崩さない企業の意地が感じられます。困難な時期だからこそ、次世代への投資を止めない判断は、中長期的な視点では高く評価されるべきです。
為替の不透明感と消費増税がもたらす小売業の試練
さらに企業を悩ませているのが、1ドル108円前後で推移する為替レートの動向です。欧米の中央銀行が金融緩和の姿勢を強める中、金利差が縮小して円高が進めば、輸出企業の利益をさらに圧迫するリスクを孕んでいます。日銀静岡支店側も、現状の想定レートは決して余裕のある設定ではないとの見解を示しました。不安定な為替相場は、経営計画を立てる上での大きな懸念材料となっており、グローバル展開する静岡企業にとって最大の壁の一つとなっています。
非製造業に目を向けると、こちらも製造業の不調に引きずられる形で悪化しています。特に2019年10月に控えた消費税率の引き上げは、小売業界に重い影を落としています。消費者の財布の紐が固くなることを見越し、小売DIは17ポイントも急落してゼロとなりました。現場では、ドラッグストアとの激しい価格競争が続いており、勝ち残る店舗と苦戦する店舗の二極化が進んでいます。増税という大きな転換点を前に、各社は生き残りをかけた厳しい舵取りを迫られるでしょう。
日銀静岡支店は「景気は緩やかに拡大している」という基本的な判断を維持していますが、3カ月先の予測DIはさらに厳しい数字が並んでいます。個人的な見解を述べれば、静岡県経済は今、中国市場の動向という「外部要因」に過度に依存せざるを得ない危うい状況にあると感じます。地場産業がこの難局を乗り越えるためには、これまでのモデルに固執せず、付加価値の高いサービスや製品への転換を加速させる必要があるでしょう。今後の動向から、一瞬たりとも目が離せません。
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