2019年5月30日、金融業界に驚きのニュースが駆け巡りました。シェアハウス向け融資を巡る不正問題で大きく揺れているスルガ銀行が、再建のキーマンとして全くの「外部」から人材を招く方針を固めたのです。その人物とは、佐川急便の親会社であるSGホールディングス(SGHD)の取締役、嵯峨行介氏(54)。銀行員としての経験を持たない異色の経歴を持つ彼が、なんと副社長という経営の中枢に座ることになります。
この思い切った抜擢に対し、ネット上のSNSでは「銀行業界の常識では考えられない人事だ」「不動産のプロを入れるのは理にかなっているかも」といった驚きと納得の声が交錯しています。その一方で、「誰が来ても根深い企業風土は変わらないのでは」「お手並み拝見」という厳しい意見も根強く、一連の不祥事で失われた信頼の大きさを物語っています。
異色の経歴がもたらす「化学反応」への期待
嵯峨氏はリクルートコスモス(現在のコスモスイニシア)の出身で、その後は投資会社の社長を歴任するなど、まさに不動産ビジネスと事業再生のスペシャリストとして歩んできました。銀行経営の経験こそありませんが、スルガ銀行が抱える最大の問題が「投資用不動産融資での不正」であることを考えれば、むしろ行内の論理に染まっていない「目利き」こそが今、最も必要とされているのかもしれません。
注目すべきは、彼が「社外取締役」という外部からの監視役ではなく、執行部内に入り込んで指揮を執る「副社長」として迎えられる点です。これは、スルガ銀行が本気で組織の膿(うみ)を出し切り、体質改善を図ろうとしている表れとも受け取れます。6月下旬の株主総会を経て正式に就任し、有国三知男社長を補佐しながら、待ったなしの経営再建に挑むことになります。
「脱・純血主義」が地方銀行を変えるか
私自身、この人事は非常に興味深い「賭け」だと感じています。これまでの日本の銀行業界、特に地方銀行は、新卒から叩き上げられた生え抜きが出世していく「純血主義」が一般的でした。しかし、審査書類の改ざんが蔓延(まんえん)するほど腐敗した組織を立て直すには、もはや内部の人間関係やしがらみにとらわれない、外部からの荒療治が不可欠でしょう。
嵯峨氏には、金融の枠にとらわれない新しいビジネスモデルの構築や、提携先の拡大といった大仕事が待っています。投資用不動産への過度な依存から脱却し、健全な収益モデルへと転換できるのか。これは単なる一企業の再建劇ではなく、日本の銀行が抱える閉鎖的な構造への挑戦でもあります。異業種から飛び込んだ「再生請負人」の手腕に、私たちは厳しくも温かい視線を注いでいく必要があるでしょう。
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