2019年05月30日、日本の医療界を揺るがす驚きのニュースが大阪から飛び込んできました。心臓病や脳卒中研究の「総本山」とも言える国立循環器病研究センターが、なんと158件もの研究において、国が定めた倫理指針を守っていなかったと発表したのです。2013年度以降、長きにわたってルールが軽視されていた事実に、私たち患者側としては「自分のデータは大丈夫なのか」と不安を抱かざるを得ません。
具体的な違反内容は2つのパターンに分かれます。まず極めて悪質なのが、内部の「倫理審査委員会」の審査すら受けずに実施された研究が2件あったことです。あろうことか、成果をまとめた論文には「委員会の承認を得た」と嘘の記載がなされていました。これは単なるうっかりミスではなく、明らかな虚偽報告です。当然ながら、これらの論文は撤回される見通しとなりました。学術的な信頼を根底から覆す行為であり、開いた口が塞がりません。
「手続き忘れ」では済まされない個人情報の扱い
残りの156件は、手続きの不備によるものです。通常、研究のために過去のカルテなどのデータを利用する場合、患者さん一人ひとりに連絡がつかないことがあります。その際、「オプトアウト」という手法が認められています。これは「ホームページなどで研究内容を公開し、患者さんが拒否する機会を保障する」という手続きですが、今回はこれを行っていませんでした。つまり、患者さんが全く知らない間に、自分の病状データが研究に使われていたことになるのです。
ここで専門用語について少し解説しましょう。「倫理指針」とは、医学研究が人の尊厳や人権を傷つけないように定められた国のルールのことです。研究のためにデータを集める際、患者さんの「同意(インフォームド・コンセント)」を得るのが大原則ですが、膨大な過去データを扱う場合は、前述の「公開と拒否権の付与」で代用することが許されています。今回問題になったのは、この最低限の仁義すら切っていなかったという点なのです。
SNSでは「信頼崩壊」の声が続出、研究者の驕りを正せ
このニュースに対し、SNS上では厳しい意見が相次いでいます。「一流の研究機関だと思っていたのにガッカリだ」「自分のデータも勝手に使われていたのかと思うと気持ち悪い」「手続きが面倒だから省いた確信犯ではないか」といった、不信感に満ちたコメントが溢れています。センター側は「患者の健康への影響はない」と説明していますが、問題はそこではありません。医療への信頼という、目に見えない最も大切なものが損なわれたのです。
コラムニストとして私見を述べれば、今回の不祥事は「研究者の驕り」以外の何物でもありません。彼らは「医学の発展のためなら、多少の手続き不備は許される」と心のどこかで思っていたのではないでしょうか。あるいは事務手続きを軽視する体質が染み付いていたのかもしれません。しかし、データの一つひとつには生身の人間が存在します。私たち患者はモルモットではありません。研究者は改めて襟を正し、倫理という土台の上に初めて医学が成り立つことを肝に銘じるべきでしょう。
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