関西経済に新しい風が吹き抜けています。東京証券取引所は2019年07月02日、今年の関西企業による新規株式公開(IPO)が10社程度に達するとの予測を発表しました。これは昨年と同様に2ケタ台を維持する見通しで、地域経済の活力が確かなものになりつつあることを示しています。IPOとは、未上場の企業が証券取引所に株式を上場させ、誰でも自由に売買できるようにすることを指します。これにより、企業は広く社会から多額の資金を調達できるようになるのです。
かつてリーマン・ショックの影響で冷え込んだ時期もありましたが、2018年には11年ぶりに2ケタの10社が上場を果たしました。2019年もその勢いは衰えず、上半期だけで既に4社が上場を決めています。SNS上でも「関西発のスタートアップが元気で嬉しい」「地元の実力派企業が注目されるのは心強い」といった、期待を寄せる声が目立っています。伝統的な製造業が強みだった関西ですが、最近ではテクノロジーを駆使した新しいビジネスモデルの台頭が顕著に見受けられるようになりました。
象徴的な存在なのが、2019年02月に上場したスマレジです。彼らはタブレット端末を活用した高機能なレジアプリを提供し、飲食や小売の現場に革命を起こしています。さらに、ソフトウエアの不具合をチェックする専門集団であるバルテスも2019年05月に上場を遂げました。加えて2019年07月24日には、大型プリンターを用いた広告制作のプロフェッショナル、ビーアンドピーの上場も控えています。業種が多岐にわたっている点は、現在の関西市場の大きな特徴と言えるでしょう。
編集部としては、この「業態の多様化」こそが関西経済のレジリエンス(回復力)を高める鍵になると考えています。古い商習慣に縛られず、最先端のIT技術や独自のニッチな強みを活かす企業が次々と現れる姿は、全国の投資家にとっても魅力的なはずです。特に大阪発のサービスが全国シェアを奪いに行く様子は、見ていて非常にワクワクさせられます。一過性のブームに終わらせず、こうした成長企業が持続的に生まれる「エコシステム(生態系)」が、今の関西には着実に整いつつあるのではないでしょうか。
次世代の主役はヘルスケア!バイオベンチャーの革新と新たな上場形態
今後の展望として、特に期待されているのがヘルスケア分野の躍進です。その筆頭候補が、大阪大学発のバイオベンチャーであるステムリムでしょう。彼らは「再生誘導医薬」という、人間の体が持つ本来の再生能力を薬で引き出す画期的な技術を有しています。現在、大阪大学や塩野義製薬と連携して臨床試験、いわゆる「治験」を精力的に進めています。治験とは、新しい薬を実際の患者さんに使用し、その安全性や効果を科学的に確認するプロセスを指し、承認への重要なステップとなります。
こうした野心的な企業の成長を支える仕組みも進化しています。2019年06月には、軽量化金属部品を手掛けるSTGが「TOKYO PRO Market」へ関西企業として初めて上場しました。この市場は参加者をプロの投資家に限定する代わりに、通常の上場よりも基準が緩和されているのが特徴です。企業にとっては、迅速な資金調達を行い、事業スピードを加速させるための有効な手段となります。多様な上場形態が活用されることで、さらなる成長の加速が期待されるのは間違いありません。
全国のIPO数が年間100社弱で推移する中、関西のシェアは約1割を占める重要なポジションを維持しています。地元の証券会社担当者も、アベノミクスによる市場環境の好転を受け、来年にかけてさらに上場が増えると自信をのぞかせています。既存の重厚長大な産業に加え、キラリと光るIT系スタートアップが次々と表舞台に立つ現在の状況は、関西の産業構造がダイナミックに塗り替えられている証左です。今後、市場の注目を独占するようなスター企業の誕生が今から楽しみでなりません。
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