2019年5月30日、ニッケルの国際価格が反落するという動きが見られました。ニッケルは、主にステンレス鋼をはじめとする建材や自動車部品に欠かせない重要なベースメタルの一つです。指標となるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物価格は、2019年5月28日に1トンあたり1万2128ドルをつけ、前週末比で2%の下落となりました。その後、29日夕方の時点でも、ほぼこの水準で取引が推移している状況です。
今回の価格下落の主要な要因は、LMEの指定倉庫在庫が増加したことです。在庫が増えるということは、市場への供給が需要を上回っている、あるいは少なくとも供給過剰感が高まっているというサインと見なされます。この在庫増加のニュースを受け、投資家の間では「売り」の姿勢が優勢となりました。この「売りが優勢」という状況は、市場参加者の多くが今後さらに価格が下がるだろうと予測し、保有しているニッケルを売却していることを示しているのです。
実は、ニッケルのLME指定倉庫在庫は、2018年初めから継続して減少傾向にありました。その背景には、特に東南アジア地域でのインフラ投資が堅調であったことが挙げられます。インフラ投資とは、道路や橋、発電所といった社会の基盤となる設備への大規模な投資であり、これによってニッケルの主用途であるステンレス鋼の需要が強く支えられていたわけです。
在庫増加のサプライズと市場の反応
実際に、在庫は前週末の時点では約16万4000トンまで減少し、これは6年2カ月ぶりの低水準でした。市場のセンチメントが「品薄」に向かっていた中で、今週に入り約1500トン(1%)の増加が確認されたのです。このわずかな増加であっても、それまで続いていた需給のタイトさに対する見方が一変し、投資家心理に大きな影響を与えてしまいました。
SNS上では、「ニッケルがついに反落したか」「在庫の数字一つで市場は敏感に反応するな」「東南アジアの需要はまだ堅いと思っていたのに」といった、驚きや戸惑いの声が散見されました。しかし、一方で、「この下げは一時的だろう」「長期的な電気自動車(EV)向け電池の需要を考えると、むしろ押し目買いのチャンス」と、冷静に将来性を見据える声もありました。
私の意見ですが、ベースメタルの価格は、このニッケルの事例が示すように、在庫水準や景気動向といったファンダメンタルズに非常に敏感に反応するものです。しかし、ニッケルは、その伝統的なステンレス鋼用途に加え、将来のエネルギー転換を支えるEVのリチウムイオンバッテリーの材料としても極めて重要です。したがって、一時的な在庫の増加や価格の反落はあったとしても、中長期的な視点から見れば、構造的な需要が今後も高まっていくと予想されます。今回の反落は、過熱感を帯びていた市場が一時的に冷静さを取り戻した、あるいは長期投資を考える上でのエントリーポイントを探る機会と捉えるべきでしょう。

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