2019年05月30日、安倍晋三首相は第25回国際交流会議「アジアの未来」の晩餐会で、世界が注目する極めて重要な提案を打ち出しました。その核心は、国境を越えたデータの自由な移動を可能にする**「データ流通圏」の構築です。この構想は、世界経済を牽引するデジタル化の波を、より公平で信頼性の高いものにするための新たな国際的な枠組みを提唱するものです。
首相は、この新しい体制を「DFFT(Data Free Flow with Trust)、すなわち信頼ある自由なデータ流通」と呼びかけました。これは、個人情報や知的財産といった重要なデータをしっかりと保護するための国際ルールを整備した上で、医療、産業、交通など多岐にわたる分野のデータを、国境に縛られず自由に流通させようという考え方です。現在、データ流通のあり方は、アメリカ、中国、ヨーロッパなどでそれぞれ独自の進化を遂げていますが、このままでは特定の国や地域によるデータの囲い込みや、独自のルールが乱立してしまう懸念があります。世界中の人々がデジタル経済の恩恵を平等に享受するためには、統一的かつ信頼に足るルールの整備が急務であると言えるでしょう。
製造業やサービス業をはじめ、多くの企業が国境を越えた拠点間でデータをやり取りするのが当たり前になった現代において、データの利活用と、それに伴うプライバシー保護への関心は世界的に高まっています。特に新興国の中には、これからデータ保護に関する法整備を進める国が多くあります。先進国と同じ水準の国際ルールのもとでデータがやり取りできるようになれば、ビジネスチャンスは飛躍的に拡大するに違いありません。これは、アジアのすべての国々の人々にデジタル経済の恩恵を行き渡らせるための、極めて現実的で前向きな取り組みと言えるでしょう。
首相は、この「DFFT」実現に向けた一連の取り組みを「大阪トラック」と命名し、2019年6月下旬に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の主要テーマとして、参加各国に強く訴えかける方針です。しかも、このデータ流通のルール作りを、中国も含めたWTO(世界貿易機関)**の舞台で進めたいと提唱している点が、この構想のもう一つの注目すべき点です。
活性化の鍵を握るWTO改革との「一石二鳥」の提案
首相は、この提案を「WTOの改革と表裏一体だ」「一石二鳥の提案だ」と強調しています。1995年に設立されたWTOは、近年、貿易摩擦の激化や紛争処理機能の低下などにより、その存在感が薄れつつあると指摘されてきました。近年開催されたG20の場でも、WTO改革について明確な方針を打ち出せずにいたのです。
しかし、データ分野は、農産物のように利害の対立が先鋭化しやすい伝統的な分野とは異なり、まだ国際ルールが手つかずの状態です。首相は、ここにこそWTOが主導権を発揮し、停滞した組織を活性化させる糸口があると見ています。G20参加国の中には、データ流通圏の構築に前向きな姿勢を示す国が多く、このデータ流通圏とWTO改革という二つの理念がG20で共有されれば、世界のデジタル経済の発展に向けた揺るぎない土台が築かれることになるでしょう。
地球規模の課題解決に向けた日本からの発信
さらに首相は、演説の中で、地球規模の喫緊の課題への取り組みについても言及しました。地球環境問題に関しては、2019年10月に世界の研究者や企業、金融関係者を招いた**「グリーン・イノベーション・サミット」を日本で開催する計画を明らかにしました。これは、規制のみに頼るのではなく、大胆な技術革新を企業の活動と結びつけることで、持続可能な問題解決を目指すというものです。この発想こそが、今の世界に必要な解決策だと私は考えます。
また、深刻な生態系への打撃となっている海洋プラスチック問題**に対しては、国際的な解決の拠点新設を打ち出しました。日本が資金を拠出する国際シンクタンク、**ERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)内に、年内にも「海洋プラスチックごみナレッジセンター」を創設するとしています。これは、知識を集約し、アジア全体での解決に向けた行動を加速させる重要な一歩となるでしょう。
今回の安倍首相の演説は、日本が議長国として迎えるG20を前に、デジタル経済の未来と地球環境という、人類共通の課題に対する日本の強いリーダーシップを示すものとなりました。特に「DFFT」と「大阪トラック」**の概念は、世界のSNSでも大きな反響を呼び、今後の国際的なルール作りの議論を牽引するキーワードとなるに違いありません。大阪の地で、世界がどのような未来を選択するのか、その議論の行方を注意深く見守ることにしましょう。
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