経営再建の道を模索しているジャパンディスプレイ(JDI)に関して、2019年5月30日、その筆頭株主である官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)から追加の金融支援を受けるという発表があり、大きな注目を集めています。これは、世界的なスマートフォン(スマホ)の販売低迷という逆風の中で、JDIの未来を左右する重要な一歩となるでしょう。INCJからの支援に加え、当初は先行きが不透明だった台湾・中国企業による連合、そして最大顧客である米アップルも協力を表明し、再建に向けた枠組みが維持された形です。
JDIは、高精細な「液晶パネル」の開発・製造で世界をリードしてきましたが、近年は韓国勢などの台頭や、市場の急速な変化に対応しきれず、厳しい経営状況が続いていました。特に、2019年4月12日に公表されていた台湾の電子部品メーカーを中心とする台中3社連合からの最大800億円にもおよぶ金融支援は、JDIにとってまさに命綱でした。しかし、この公表後にスマホ市場の減速がさらに鮮明になり、JDIの主力であるスマホ向けパネル事業が悪化したため、台中3社での正式決定、すなわち「機関決定」が遅れており、支援の実現そのものが危ぶまれていました。
この危機的状況を打開するため、JDIは関係各所と精力的に協議を重ね、今回の再建枠組みの維持にこぎ着けました。具体的な支援策として、JDIが保有する関連会社の株式をINCJへ譲渡することが決定しています。この関連会社とは、次世代の有機ELディスプレイ技術である「OLED(オーレッド)」の開発を担う**JOLED(ジェイオーレッド)**のこと。JDIはこのJOLED株を全てINCJに譲渡し、INCJからの借入金などおよそ447億円と相殺することによって、財政面での負担軽減を図るのです。
さらに、JDIの再建を後押しするのは、世界最大のテクノロジー企業であるアップルからの協力です。アップルはJDIにとってスマホ用液晶パネルの最も重要な供給元であり、このサプライヤーの存続はアップルのサプライチェーンにとっても極めて重要です。そのため、アップルもJDIに対する借入金の一部返済の繰り延べに応じるという、実質的な資金繰り支援に動くことになりました。このINCJとアップルの動きが決定打となり、一旦は慎重姿勢に転じていた台中3社連合も前向きな姿勢を取り戻しています。
これにより、台中3社連合は2019年6月14日までに支援の是非を機関決定にかける意向をJDI側に伝達しました。この流れが予定通りに進めば、JDIは2019年7月以降に臨時株主総会を開催し、正式に支援の受け入れや新しい経営体制を決定する見通しです。そして、2019年の年末までには、支援のための資金の払い込みといった一連の手続きを完了させる予定で、再建に向けたロードマップが再び示された格好です。
「日の丸ディスプレイ」再建の重要性とSNSの反応
このJDIの再建問題は、単なる一企業の経営危機に留まりません。JDIは、ソニー、東芝、日立製作所の液晶パネル事業を統合して誕生した経緯があり、日本の技術力を結集した「日の丸ディスプレイ」の中核を担ってきました。そのため、SNS上でも「日本の技術が流出するのは避けたい」「頑張ってほしい」といったJDIの技術力に対する期待や、再建を願う声が多く見受けられます。一方で、「何度も支援しているのに、本当に今度こそ成功するのか」「経営責任はどうなるのか」といった厳しい意見や、支援の遅れに対する懸念の声も上がっていました。
私自身、コラムニストとしてこの状況を注視していますが、今回のINCJ、アップル、そして台中連合という複数のキープレーヤーによる支援継続は、JDIが持つ技術力の高さを世界がまだ認めている証拠だと感じています。特に、INCJの追加支援は、国のファンドとして日本の基幹産業の一つであるディスプレイ技術の命脈を保とうという強い意思の表れでしょう。ただし、技術力があっても、世界市場のスピードと変化に対応できなければ企業は存続できません。今回の再建プランが実現したとしても、JDIには市場のニーズを見極め、高付加価値な製品開発へ舵を切る、より一層の迅速で大胆な経営改革が求められるでしょう。台中連合の正式決定、そしてその後の経営体制の刷新が、JDIの真価を問う試金石となります。
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