2019年5月30日、日本の経済界を牽引する経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)が定時総会を開催しました。しかし、就任2年目を迎えた中西宏明会長が検査入院のため欠席するという異例の事態となりました。会長の不在は、多くの主要な議論を主導してきた経団連にとって、その影響は非常に大きいものと推察されます。このニュースは、SNSでも「日本の働き方が変わるかもしれない重要な時期なのに」「会長不在は心配」といった声が上がり、大きな反響を呼んでいるのです。
総会では、安倍晋三首相も出席し、「お見舞いを申し上げるとともに一日も早いご快癒をお祈りする」と、中西会長へのねぎらいの言葉を述べられました。中西会長は、ご自身の就任1年目の間に、かねてから議論となっていた「就職活動の時期を定めるルール(就活ルール)」の廃止を決定するなど、日本の新卒採用のあり方に大きな一石を投じてきた立役者です。さらに、大学側との協議会で、卒業時期に関わらず一年を通して採用を行う「通年採用」を拡大する方向で合意するなど、人材獲得の改革を精力的に進めていらっしゃいました。
中西会長は6月末までの入院が予定されており、その間の組織運営が注目されます。総会後の記者会見では、筆頭副会長を務める岡本毅氏(東京ガス相談役)が、会長不在の体制について言及しました。岡本副会長は、「18人の副会長が力を合わせ、業務を遂行する」と述べ、組織として結束し、重要課題に取り組んでいく姿勢を強調されました。このようなトップリーダーの健康問題は、組織の将来的な方向性や意思決定のスピードに影響を与えかねないため、今後の動向から目が離せないでしょう。
企業の人材採用に「柔軟性」の波が押し寄せる
今回の総会後の記者会見で、岡本副会長は企業の人材採用に関する重要な見解を表明されました。それは「採用の仕方も人材育成の仕方も柔軟にしていかなければならない」という言葉です。これは、従来の日本企業に根強く残る採用システムからの脱却を強く意識した発言だと、私は考えています。長らく日本社会のスタンダードであった「新卒一括採用」という仕組みは、一定の時期に卒業予定の学生を一斉に採用し、入社後に長期的な研修と育成を行うシステムを指しますが、これが多様化する現代社会のニーズに合わなくなってきているのではないでしょうか。
岡本副会長は、今後は個人のスキルや実務経験といった能力を重視する「通年採用」や、他社での経験を持つ人材を採用する「キャリア採用(中途採用)」がさらに広がっていくとの見方を示されました。一方で、新卒一括採用の仕組みも「併存」するとの展望も示されています。これは、既存の良さを残しつつ、時代の変化に合わせて新たな採用手法を取り入れていく、極めて現実的かつ合理的な戦略だと思います。優秀な人材を国内外から獲得し、企業の国際競争力を高めるためには、採用の門戸を広げ、多様なバックグラウンドを持つ人々を受け入れる柔軟な姿勢が不可欠となるでしょう。
私見を述べさせていただくならば、この「柔軟化」の流れは、日本の労働市場全体にとって極めてポジティブな変化だと断言できます。学生は自分のペースで就職活動を進められるようになり、企業は本当に必要なタイミングで、即戦力となる人材を獲得することが可能になります。キャリア採用の拡大は、転職をキャリアアップの手段として捉える社会意識の変化を後押しし、個人の自律的なキャリア形成を促す効果も期待できるはずです。経団連が描くこの新たな採用戦略は、間違いなく日本の働き方の未来を形作る重要な一歩となることでしょう。
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