2019年5月30日、日本の電気機械産業を代表する業界団体、**日本電機工業会(JEMA)**は、新たなリーダーシップ体制への移行を発表しました。その舵取りを託されたのは、パナソニック会長の長栄周作氏です。同日の総会をもって、前任の三菱電機会長、柵山正樹氏からバトンが渡され、長栄氏が新会長に就任されました。また、副会長には明電舎の浜崎祐司会長が新たに就任し、業界の未来を担う強力な布陣が整ったといえるでしょう。
この歴史的な交代劇の直後、長栄新会長は記者会見の場で、世界経済の最大の懸案事項となっている米中貿易摩擦について、率直な見解を披露なさいました。この摩擦は単なる関税の応酬にとどまらず、電機メーカーの事業戦略にまで波及し始めています。実際、中国国内に製造拠点を構える企業の中には、生産体制の見直しを迫られ、他国への移転を検討する動きも出ていると指摘されました。さらに、日本の産業機器や電子部品といった輸出品目にも、この摩擦が間接的な影響を及ぼす可能性は否定できない状況です。
長栄氏は、「これから大きな影響が出てくると見ています。ですから、この動向を細心の注意を払って注視し、今後の展開を的確に見極める必要があるでしょう」と、この国際情勢に対する強い危機感と慎重な姿勢を強調なさいました。電機業界全体が、この激しい国際貿易の潮流から目を離さず、状況に応じて柔軟に対応していくことが求められています。
特に注目を集めたのは、中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)に対する米国の輸出禁止措置への対応です。これは、特定の外国企業に対し、米国の技術や製品の輸出・再輸出を制限する規制のこと。この問題に関してJEMAは、統一した公式な方針は打ち出さないという立場を表明されました。その上で、長栄氏は「米国の規制に抵触しないよう、各電機メーカーが独自に判断し、対応を決めることが重要」であるとの見解を示されました。この問題は、各企業が国際法務を遵守し、個別のリスクを管理しながら、自律的に判断を下す必要性を際立たせています。
一方で、日本の電機業界が持続的に成長を遂げるための重要な鍵についても言及されました。それは、「IoT」と「デジタル化」の進展です。IoT(アイオーティー)とは、Internet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と訳されます。これは、家電製品や産業機器など、あらゆるモノがインターネットに接続され、相互に情報交換を行う技術や概念を指す専門用語です。長栄氏は、この技術革新の波に十分留意し、事業を展開していく重要性を説かれました。
さらに、海外事業においては、「各国や地域ごとの状況に応じた事業をしていくことが大切だ」と述べられました。画一的な戦略ではなく、現地の市場や文化、規制などに合わせたローカライズされたアプローチが、グローバル市場で勝ち抜くための不可欠な要素であると示唆されています。激動の時代だからこそ、技術の進化と地域への適合、そして国際情勢の深い理解が求められているといえるでしょう。
私は、この長栄氏の就任と発言を拝見し、日本の電機業界の未来への責任感を強く感じています。米中間の貿易摩擦という、一企業の努力だけではどうにもならない外部環境の変化に対し、「注視し見極める」という慎重な姿勢は、企業経営者として極めて現実的で賢明な判断だと考えられます。特に、ファーウェイ問題への対応を各社の自主性に委ねるという判断は、JEMAが一律の規制ではなく、各社の多様なビジネスモデルとリスク許容度を尊重している証左でしょう。この自主性が、かえって迅速で柔軟な対応を可能にするに違いありません。
また、IoTやデジタル化を持続的発展の条件として明確に打ち出された点も、大変に注目すべきポイントです。重電から白物家電まで幅広い分野を網羅する日本の電機業界が、このデジタルトランスフォーメーションの波に乗り遅れることは、文字通り死活問題となります。長栄新会長率いるJEMAが、この技術革新を業界全体で推進し、国際競争力を高めていくことに、私は大きな期待を抱いています。新時代の幕開けを告げる、長栄新会長の手腕に今後も目が離せないでしょう。
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