環境試験装置の分野で世界トップシェアを誇るエスペックが、次なる成長の軸として車載向け電子部品の検査事業に本格的に乗り出します。この戦略は、自動車産業を揺るがす「CASE」と呼ばれる技術革新の波を捉え、事業構造を大きく転換させるものです。2019年中に約3億5千万円を投じて、中核拠点である愛知県の試験場に検査体制を大幅に増強する計画が進められています。自動運転や電動化といった次世代技術の進展に伴い、車載部品の信頼性を確認するための検査需要が急拡大しており、同社は現状で連結売上高の4割超を占める車載向け比率を、3年後には5割超へと引き上げる意向を表明しています。
エスペックが手掛ける環境試験装置とは、文字通りジャングルから砂漠、さらには南極や成層圏といった地球上の様々な自然環境を、装置の内部に再現できる最先端の機器群のことです。これにより、電子部品や家電製品が過酷な状況下でも確実に作動するかどうかを詳細に確かめることができます。同社はこの分野で、国内外の競合他社である楠本化成や日立グローバルライフソリューションズを凌駕し、世界シェア約30%、国内シェアに至っては60%を掌握する圧倒的なリーダーシップを発揮しています。その強みは、雨や雪、霧といった幅広い気象条件を一元的に再現できる技術力にあり、さらに塩分を含んだ泥水を噴霧するような非常にニッチな環境までも作り出せる装置も揃えているのです。
特に注目すべきは、2018年に開発された、わずか1分間で摂氏5度を上下させる急激な温度変化の環境を作り出せる装置など、他社の追随を許さない**「カスタマイズできる環境の種類」の豊富さでしょう。石田雅昭社長は、この独自の強みを活かして、今後の主戦場となる車載向けの電子部品検査市場で優位性を確立する構えです。現在の自動車業界には、コネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリング&サービス(Shared & Services)、電動化(Electric)を指す「CASE」の大きな潮流が到来しており、あらゆる環境下で車載電子部品の誤作動を防ぐための信頼性検査が、かつてないほどに重要性を増しているのです。
これまでの家電製品向けの試験が摂氏60度からマイナス10度程度の温度域で一般的だったのに対し、運転支援センサーやカメラといった車載部品は、摂氏150度からマイナス55度という、より広範かつ過酷な温度での耐久性が要求されることが少なくありません。この高まるニーズに応えるため、エスペックは豊田試験場(愛知県豊田市)において、世界的に厳しい基準とされるドイツの自動車業界規格に合致する検査体制を構築します。約3億5千万円を投じるこの拡充により、塩水噴霧による部品劣化試験や低温耐久性試験など、ドイツ規格が定める全27項目を、この豊田試験場の一か所ですべて実施可能にする計画です。これにより、トヨタ自動車をはじめとする日本メーカーだけでなく、欧州向けの部品検査ニーズも積極的に取り込むことができるでしょう。
私見を述べれば、このエスペックの動きは、日本のモノづくり**の未来を支える非常に賢明な一歩だと考えられます。かつて同社の売上を支えた日本の家電業界が衰退する中、2000年代に2割程度だった車載向け比率を、現在では4割超にまで引き上げてきた同社の事業転換能力は素晴らしいと言えます。富士キメラ総研の予測では、先進運転支援システム(ADAS)関連部品を含む車載電装システムの世界市場は、2030年には2017年比で2.2倍の50兆円規模にまで拡大する見込みであり、これに伴う検査市場の成長も確実視されています。検査の質の高さは、次世代自動車の安全と信頼に直結しますから、同社が検査の「プロ」として、この成長市場で主導権を握ることは、日本の産業全体にとっても大きなプラスとなるに違いありません。豊田試験場の検査能力増強は、世界市場での存在感を高めるための重要な布石となるでしょう。
SNS上でも、このエスペックの積極的な投資戦略は「さすが世界一の技術力」や「日本の強みが活きる分野だ」といった肯定的な意見で迎えられています。2019年1月には、販売した環境試験装置のメンテナンス拠点がベトナムで稼働を開始するなど、グローバルな事業展開も加速させている最中です。豊田試験場の検査体制の拡充を通じて、同社が目指す「3年後に売上高の5割超を車載向けで達成する」という目標は、十分実現可能なものだと私は確信しています。今後、CASE技術の進展によってさらに複雑化する車載部品の信頼性確保において、エスペックの果たす役割はますます大きくなるでしょう。
コメント