2018年12月より、音楽チャートの老舗であるオリコンが、従来のCDランキングに加え、「週間ストリーミングランキング」と、CD・デジタルダウンロード・ストリーミングの3要素を統合した「週間合算ランキング」の発表を始めました。これは、特典を目当てとしたCDの複数購入が一般化し、音源の配信限定リリースも増えるという時代の流れを受け、真のヒット曲を測る新たな物差しとして導入されたものです。この新しい試みが始まって約半年が経過した今、特に「週間ストリーミングランキング」から、興味深い、そして示唆に富む音楽シーンの動向が見えてきています。
まず、特筆すべきは、これまでCDシングルランキングの上位を独占してきたアイドルグループやダンス&ボーカルグループが、このストリーミングランキングでは軒並みトップ層に名を連ねていない点です。もちろん、ジャニーズ系グループのように、そもそも音源のストリーミング配信を解禁していないアーティストはランキング対象外です。しかし、音源を配信しているAKB48などの48グループ、乃木坂46や欅坂46などの坂道系、そしてEXILEや三代目 J SOUL BROTHERSなどのLDH勢といった、人気の高いグループもトップ10圏外なのです。これは、CDの売上が必ずしも楽曲の純粋な聴取頻度、すなわちストリーミング再生回数に直結しないという、現代のリスナーの音楽の楽しみ方を浮き彫りにしています。
次に目立つのが、楽曲の「息の長さ」、つまりロングヒットの傾向が強いことです。この現象を牽引しているのが、2016年にメジャーデビューしたシンガーソングライターのあいみょんさんの絶大な人気でしょう。彼女の代表曲の一つである「マリーゴールド」は、2018年夏にリリースされて以降、徐々に支持を拡大し、年末の紅白歌合戦での披露を機に幅広い世代へと浸透しました。驚くべきことに、2018年12月24日付から2019年5月27日付まで、実に23週連続で週間ストリーミングランキングの1位を独占したのです。さらに、2019年4月リリースの「ハルノヒ」や2017年リリースの「君はロックを聴かない」も長期にわたりトップ10内を維持しており、あいみょんさんの楽曲がいかに日常的に繰り返し聴かれているかを示しています。
ストリーミングは「曲の力」が正義!新世代アーティストの台頭
現在の音楽シーン全体を見渡すと、キャリアの長いベテランや大御所が健在で、安定した存在感を放っています。しかし、このストリーミングランキングのトップ層を見てみると、あいみょんさんを筆頭に、新人アーティストの活躍が際立っていることがわかります。その中でも大きな注目を集めているのが、2019年1月にアルバム『SYMPA』でメジャーデビューを果たした4人組ロックバンド、King Gnu(キング・ヌー)です。彼らは、東京藝術大学出身のリーダー・常田大希さんと、同じく同大学で声楽を学んだヴォーカリスト・井口理さんを中心に、高い実力を持つミュージシャンが集結したエリート音楽集団として知られています。
King Gnuの楽曲「白日」は、2019年2月の配信リリース後、ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』の主題歌に起用されたことをきっかけに急速に人気を獲得し、リリースから3カ月連続でTOP3にランクインしています。ストリーミングランキングにおいては、CDの販売枚数やライブ動員数といった「熱量」を示す指標ではなく、純粋な「再生回数」が重要視されます。これは、特典戦略などでCDを積み上げることが難しい分、リスナーに「何度も聴きたい」「繰り返し聴く価値がある」と思わせるような、楽曲そのものの質の高さ、すなわち**シンプルな「曲の良さ」**がヒットに直結することを意味しているのです。この点が、これまでのCDシングルランキングとの最も大きな違いであり、「楽曲の力」が真価を発揮する新時代が到来したと私は考えます。
そして、このストリーミング発のヒット曲の中で、今最も勢いがあるのが、2018年にメジャーデビューした4人組ピアノポップバンド、**Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)**の新曲「Pretender」でしょう。彼らは、2018年にドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌「ノーダウト」で既に注目を集めていましたが、2019年5月公開の映画『コンフィデンスマンJP』の主題歌として書き下ろされた「Pretender」は、心に響くメロディと、ヴォーカルの藤原聡さんの伸びやかな歌声が大きな魅力となっています。この楽曲は、2019年6月3日付のストリーミングランキングで、あいみょんさんの「マリーゴールド」から首位の座を奪取しました。さらに、過去曲である「ノーダウト」もトップテンに返り咲くなど、彼らの勢いは本物であり、この「Pretender」も長期間のヒットが確実視されています。
Official髭男dismのメンバーも、King Gnuと同様に4人全員が確固たるミュージシャンシップ、つまり高い音楽的技能とセンスを併せ持っています。ジャンルに縛られない瑞々しい躍動感を持つ曲調を生み出す彼らの実力は、まさに新しい時代のヒットメイカーの象徴と言えるでしょう。2019年5月に「令和」という新しい時代が始まり、音楽のヒット指標も明確に変化しつつあります。もはや、話題性やプロモーションの力だけでは測れない「真の実力」が試される時代です。Official髭男dismのような、確かな才能と高い演奏技術を持つ実力派バンドこそが、今後の日本の音楽シーンの行方を握る鍵となるのではないでしょうか。
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