今、日本のタクシー配車アプリ市場が熱い戦いの舞台となっています。市場規模が縮小傾向にある中で、海外の巨大プレイヤーたちが、その技術力と資金力を武器に一気に日本のタクシー業界の地殻変動を引き起こしているのです。特に、中国の滴滴出行(ディディチューシン)とソフトバンクの合弁会社であるDiDiモビリティジャパン、そして米国のウーバーテクノロジーズの日本法人であるウーバージャパンが、国内勢を猛烈に追い上げています。この激しい競争は、今後、私たちの移動手段のあり方を大きく塗り替える可能性を秘めているでしょう。
その中でも、DiDiモビリティジャパンは、配車アプリ「DiDi」のサービスエリアを急速に拡大しています。もともと2018年に大阪でサービスを開始していましたが、2019年4月には東京や京都にも進出し、そして2019年5月29日には新たに兵庫県でのサービス開始を発表しました。これにより、京阪神エリアにおける人口カバー率はなんと8割にまで達したというから驚きです。兵庫県内では、第一交通グループや神戸相互タクシーなど11社と提携し、神戸市とその近郊の8市町を対象エリアとしています。同社は2019年度中には、サービス地域を全国13都市まで広げる計画だとのことです。
一方で、ウーバージャパンも手をこまねいているわけではありません。2019年3月には、全国34都道府県で8,000台以上のタクシーを保有する業界大手の第一交通産業と提携を締結。この提携により、同年4月からは第一交通などと連携し、広島県内で配車サービスをスタートさせています。また、京都ではエムケイと組むなど、着々と地盤を固めている状況です。ウーバージャパンのトム・ホワイト氏は「東京でもオペレーションしたい」と語るなど、さらなる展開地域拡大に強い意欲を見せています。海外勢の攻勢は、まさに日本のタクシー業界にとって**「黒船来航」といった様相を呈していると言えるでしょう。
海外勢が持つ最大の強みは、その巨大な海外市場で既に確保している外国人利用者の存在にあります。彼らは、使い慣れたアプリ一つで、旅行先の日本でもスムーズにタクシーを呼ぶことができるため、非常に利便性が高いのです。タクシー事業者側にとっても、これによって外国人観光客を簡単に取り込めるという大きなメリットが生まれます。例えば、2019年4月下旬から5月上旬にかけての10連休中、京都におけるDiDi利用者のうち、中国人利用者の比率は約4割にものぼったというデータは、その集客力の高さを明確に示していると言えるでしょう。このインバウンド需要の取り込みは、市場縮小に悩む日本のタクシー業界にとって、まさに救世主的な要素となり得るのではないでしょうか。
迎え撃つ日本勢の先頭を走るのは、ジャパンタクシーです。タクシー業界最大手の日本交通をグループ会社に持つ同社は、約900にものぼるタクシー事業者と提携し、全都道府県でサービスを提供しています。そのタクシー保有台数は、6万台強にも達しており、これは大きな強みです。また、他にもソニーがタクシー5社と共同で設立したみんなのタクシーが2019年4月に配車サービスを開始したばかりで、ディー・エヌ・エー(DeNA)も「MOV(モブ)」を2018年12月から都内で展開し、京阪神エリアでの拡大も計画するなど、国内勢も負けじと技術とネットワークで応戦しています。
しかし、国内のタクシー市場は、年間延べ利用者数が過去25年間で半減しているという厳しい現実があり、市場は縮小の一途をたどっているのです。この限られたパイを巡る争いは、今後さらに激しくなることは確実です。SNS上でも、「便利なアプリで競争するのは大歓迎」「どこまで地方に浸透するか」「タクシーの質向上にも繋がるのでは」といった期待の声や、「外国人観光客が増えるのはありがたいが、運転手の確保が心配」といった懸念も出ており、関心の高さが伺えます。
未来の移動サービス「MaaS」の覇権争いへ
単なる配車アプリの競争に留まらず、この争いは、複数の移動手段を組み合わせて一つのサービスとして提供するMaaS(マース)、すなわち「Mobility as a Service」の普及を前にした陣取り合戦**という意味合いも持っています。MaaSとは、電車、バス、タクシー、シェアサイクルなど、あらゆる交通手段をITでつなぎ、検索、予約、決済などを一括で行えるようにする次世代の統合的な移動サービスのことです。配車アプリはその重要な一角を担うものであり、どのアプリが多くの利用者を抱え込むかが、今後のMaaSの広がりを大きく左右するでしょう。グローバルな知見と資金力を持つ海外勢か、それとも緻密な国内ネットワークを持つ日本勢か。この激しい競争の行方は、私たちの未来の移動体験そのものを形作っていくに違いありません。
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