2019年07月04日、鉄鋼業界を取り巻く原料市場では、非常に対照的な動きが鮮明となっています。鉄鉱石の調達コストが約2割も跳ね上がる一方で、リサイクル原料である「鉄スクラップ」の価格は下落の一途を辿っているのです。現在、東京地区における電炉メーカーの買い取り価格は1トンあたり2万6500円前後で推移しており、わずか1ヶ月の間で約10%も値を下げました。これは業界全体で見ても、およそ2年ぶりとなる異例の安値水準と言えるでしょう。
つい数ヶ月前の状況を振り返ると、鉄スクラップの価格は2019年02月頃から上昇傾向にありました。続く2019年03月には1トンあたり3万4000円前後の高値を記録し、市場は活気に満ちていたのです。しかし、2019年04月に入ると市場は調整局面を迎え、2019年05月から06月にかけては下落スピードがさらに加速しました。その結果、節目となる1トン3万円の大台をあっさりと割り込み、現在の軟調な相場へと繋がっています。
電炉による生産調整と建築需要の停滞が招いた供給過剰
この急激な値下がりの背景には、電炉メーカーによる「生産調整」が大きく関わっています。電炉とは、文字通り電気の熱を利用して鉄スクラップを溶かし、新しい鉄製品へと再生する設備のことです。関東の鉄スクラップ商社によれば、建築用鋼材の動きが鈍くなっている影響で、大型連休の前後から鉄筋用棒鋼などの減産が続いているそうです。原料を仕入れても製品として売れないため、各社が買い控えに動いたことが、価格を押し下げる要因となりました。
こうした国内の冷え込みに呼応するように、海外市場でも弱気なムードが漂っています。アジア諸国のメーカーにおいて鋼材の需給バランスが緩むとの見方が広がっており、日本からの輸出価格も力強さを欠いているのが現状です。SNS上では「建設現場のコストダウンに繋がるのか」「鉄鋼株の行方が気になる」といった声が上がっており、川下産業への影響に注目が集まっています。世界的な景気の不透明感が、ダイレクトに原料相場へ反映されている形です。
こうした中、最大手の東京製鉄は全品種の鋼材値下げを決定しました。通常であれば原料高は経営を圧迫しますが、鉄スクラップ安が製品価格を下げる余力を生み出したと言えます。個人的な見解としては、この「原料安・製品安」の流れは短期的にはユーザーに恩恵をもたらすものの、製造側の収益性を損なうリスクも孕んでいると感じます。2019年後半に向けて、インフラ投資がどこまで市場を支えられるかが、今後の鉄鋼相場を占う重要な鍵となるはずです。
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