地球温暖化の影響が深刻さを増す中で、民間企業にも大きな変化の波が押し寄せています。環境省は2019年07月04日、気候変動が企業活動に及ぼす影響を透明化し、積極的な情報開示を促すための新たな支援事業に乗り出すことを発表しました。これは平均気温が2度上昇した未来を想定し、自社の財務にどのような損害やチャンスが生まれるのかを予測する画期的な試みです。
SNS上では「ついに国が本腰を入れた」「企業の透明性が高まるのは投資家として歓迎」といった期待の声が上がる一方で、分析の難しさを懸念する意見も見受けられます。確かに、気候変動のリスクは複雑怪奇です。集中豪雨や洪水といった物理的な被害だけでなく、脱炭素社会への移行に伴う政策変更や、二酸化炭素の排出コスト増大といった多角的な視点が求められるからでしょう。
今回の取り組みの核となるのは、2019年度中に選定される先行モデル企業12社への直接的な分析支援です。環境省はデロイトトーマツコンサルティングとタッグを組み、業界ごとの特性に応じたリスク分析の手法を確立させます。2019年07月19日には合同説明会が開催される予定で、食品関連をはじめとする気候の影響を受けやすい業種が重点的に募集される見通しとなっています。
ここで重要なキーワードとなるのが「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」という言葉です。これは、各国の金融当局が集まる金融安定理事会が設立した組織で、企業に対して「気候変動がもたらす財務的なリスクをちゃんと株主に伝えなさい」と提言しています。投資家にとって、その企業が将来の環境変化に耐えられるかどうかは、投資判断を下すための死活問題なのです。
専門的な財務分析を一般化する「見える化」への挑戦
具体的には、気温上昇に伴う冷房エネルギーコストの増加や、将来導入される可能性がある「炭素税」による支出増などを、可能な限り数字で算出します。これを「定量的な予測」と呼びますが、どうしても計算できない要素については、言葉でシナリオを描く「定性的な想定」を行う工夫もなされます。これまで専門知識の不足から分析を諦めていた企業にとって、大きな指針となるでしょう。
編集者である私の視点としては、この動きは単なる環境保護の枠を超え、企業の「生存戦略」そのものであると感じます。2019年06月末時点で、日本でもTCFDに賛同する企業は100社を超えましたが、具体的な対応策を公表できているのは10社程度に留まります。専門的な分析が必要な分野だからこそ、国が予算1億円を投じて手本を示す意義は極めて大きいと言えます。
環境省は経済産業省や金融庁とも連携し、2019年05月末には「TCFDコンソーシアム」という産官学の協力組織も立ち上げました。対策を講じている企業は、投資家から「経営リスクが低い」と高く評価され、資金調達が有利になるという実利も生まれます。パリ協定の目標達成に向け、日本企業が世界のマネーを引き寄せるための重要な転換点が、まさに今訪れているのです。
来春の2020年03月ごろまでには、今回の12社の分析事例を凝縮したマニュアル冊子が公表される予定です。この冊子が普及すれば、多くの企業が自前でリスク分析を行えるようになり、日本の産業界全体のレジリエンス(回復力)が高まるに違いありません。未来の不確実性をチャンスに変える企業の挑戦は、この記事が公開された2019年、いよいよ本格始動します。
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