バブル経済が日本中を席巻していた1988年01月01日、あるキャッチコピーが人々の心を掴みました。「ほしいものが、ほしいわ。」という糸井重里氏の言葉は、当時の豊かさの象徴です。しかしその後、景気は後退し、2000年01月01日には辰巳渚氏の著書『「捨てる!」技術』が異例の大ヒットを記録しました。この時期から、日本人の価値観は「物を所有すること」から「身軽であること」へと大きく舵を切ったのです。
それ以来、世の中では「モノ消費」から「コト消費」への移行が叫ばれるようになりました。自治体のテーマパークや駅ビルの娯楽施設など、多くの企業が体験型のサービスに力を注いできたのです。ところが、多くのサービスが「どこでも安く早く」提供されるようになり、次第に「コモディティー化」という落とし穴に陥ってしまいました。これは、製品やサービスの個性が失われ、消費者にとって「どれを選んでも同じ」に見えてしまう現象を指しています。
令和の幕開けと共に誕生する「体験型」の新しい形
2019年07月05日現在の今、この均質化された市場に新しい風が吹いています。その象徴ともいえるのが、2019年09月27日に日本橋で開業予定の商業施設「コレド室町テラス」でしょう。ここでは単なる買い物ではなく、鋳造技術を実際に体験して自分だけの道具を作るといった、職人文化に触れるテナントが注目を集めています。高級感やブランド名に頼るのではなく、自分の手を動かして価値を生み出すプロセスに、人々は魅力を感じているようです。
また、住宅業界でもユニークな動きが見られます。アールシーコアが展開するログハウス「BESS」は、家を単なる居住スペースではなく「暮らしを楽しむための道具」と定義しました。家を自分好みに改造したり、庭でバーベキューをしながら仲間と交流したりすることを推奨しているのです。これは、資産価値や見栄のために家を買うという従来の常識を覆す、非常にクリエイティブな提案ではないでしょうか。
こうした新しい消費の波は、イベントの現場でも顕著に現れています。瀬戸内国際芸術祭のような野外美術展や、惜しまれつつ引退する列車の「ラストラン」には、驚くほどの群衆が詰めかけています。SNS上では「その瞬間、その場所でしか得られない思い出を誰かと共有したい」という声が溢れており、ハッシュタグを通じた交流も活発です。今の時代、モノや場所はあくまで「人と出会うための舞台装置」としての役割を求められています。
編集者が見る「令和流」消費の核心とは
インターネットメディアの編集者として私は、この変化を「心の充足への回帰」であると確信しています。デジタル化が進み、指先一つで何でも手に入る今だからこそ、私たちは物理的な感触や、生身の人間との繋がりを強く求めているのかもしれません。便利さや効率性だけを追求する消費の形は、もはや過去のものになりつつあります。大切なのは、自分にとっての「唯一無二の物語」をいかに紡げるかという点に尽きるでしょう。
2019年07月05日の今日という日は、消費の定義が「所有」から「共感」へと完全にアップデートされた記念すべき転換点と言えるはずです。誰かに自慢するための物ではなく、自分の心を豊かにしてくれる体験のために時間とお金を使う。そんな賢くも温かい消費スタイルが、令和のスタンダードになっていくに違いありません。この新しい潮流が、私たちの日常をどのように彩っていくのか、今後の展開から目が離せそうにありません。
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