中東の経済大国トルコに、暗雲が垂れ込めています。トルコ統計局が2019年05月31日に発表したデータによると、2019年01月から03月期の実質国内総生産(GDP)は、前年同期比で2.6%の減少となりました。これは単なる一時的な落ち込みではありません。実は、前四半期に続いて2期連続でのマイナス成長となってしまったのです。経済学の定義において、2四半期連続のマイナス成長は一般的に「景気後退(リセッション)」入りを示唆する深刻なサインと捉えられています。
今回の発表を受け、市場や市民の間には動揺が広がっています。GDPとは「国内総生産」のことで、一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額を指し、国の経済力を測る最も重要な指標の一つです。これが縮小しているということは、国全体の稼ぐ力が弱まっていることを意味します。主な要因として挙げられるのは、止まらない通貨安と、それに伴う激しいインフレです。物価高騰が市民の財布の紐を固くし、個人消費や住宅投資といった、これまでトルコ経済を牽引してきたエンジンが急速に冷え込んでいるのが現状です。
ゴーストタウン化する建設現場と市民の嘆き
具体的な影響は、街の風景にも色濃く表れています。イスタンブール郊外のエセンユルト区では、建設中の鉄筋コンクリートの集合住宅が、未完成のまま放置されるという異様な光景が広がっています。現地の不動産関係者は「建設中の住宅の半分は止まっている」と嘆きを隠せません。これまでトルコの経済成長は、活発な建設需要によって支えられてきましたが、その建設業が2019年01月から03月期には前年同期比で10.9%もの大幅なマイナスを記録してしまいました。
不動産評価会社の分析によれば、建設需要の6割を民間住宅が占めているとのことですが、3月の新築住宅販売も約13%の落ち込みを見せています。このままいけば、年間の住宅建設は25%ほど減少するのではないかという暗い予測も飛び交っています。建設現場が止まるということは、そこで働く人々の雇用が失われるだけでなく、建材や家具など関連産業すべてに負の連鎖が波及することを意味しており、経済全体へのダメージは計り知れません。
SNSでの反響と切実な声
このニュースに対し、SNS上では様々な反応が見られます。「最近スーパーに行っても野菜が高すぎて買えない。生活が苦しい」「リラが安いから外国人観光客には天国かもしれないが、住んでいる私たちにとっては地獄だ」といった、インフレに苦しむ市民の切実な声が多数投稿されています。一方で、投資家界隈からは「底なし沼のようだ。今は手を出せない」「エルドアン大統領の手腕が問われる局面だ」といった厳しい分析も見受けられ、先行きへの不安がタイムラインを埋め尽くしています。
対米関係改善へ、大統領の次なる一手
こうした苦境を打破するため、エルドアン大統領は外交による打開策を模索しています。注目されているのは、2019年06月下旬に予定されているトランプ米大統領との首脳会談です。通貨リラが暴落している大きな原因の一つに、アメリカとの政治的な緊張関係があります。リラは年初から対ドルで約1割も下落しており、2017年末と比較するとその下落率は3割を超えています。
輸入品に頼る部分の多いトルコにとって、自国通貨が安くなることは、輸入物価の高騰、すなわちインフレ率の高止まり(現在は20%近く)に直結します。エルドアン大統領としては、トランプ氏との会談で関係改善をアピールし、通貨の安定を取り戻したい考えでしょう。しかし、政治的な駆け引きだけで経済の根本的な構造問題を解決できるのか、予断を許さない状況が続いています。
編集後記:構造改革への転換が急務
私見ですが、今回のGDPマイナス成長は、建設業と外資頼みであったトルコ経済の構造的な脆さを浮き彫りにしたと感じます。確かに米国との関係改善は通貨安定の特効薬になるかもしれませんが、それは一時的な対症療法に過ぎないのではないでしょうか。インフレ率20%という数字は、市民生活を根底から破壊しかねない危険な水準です。
外交カードに頼るだけでなく、国内産業の多角化や、より堅実な金融政策への転換など、痛みを伴う構造改革に踏み切れるかどうかが、トルコが再び成長軌道に戻れるかの分かれ道になるはずです。6月下旬の米土首脳会談が、単なる握手のパフォーマンスに終わらず、実質的な経済安定への転換点となることを期待せずにはいられません。
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