2019年5月、日本の株式市場の主要指数である日経平均株価が、月間で1,657円54銭、率にして7.4%という大きな下げ幅を記録しました。これは5カ月ぶりの大きさとなる下落です。この相場を主導したのは、世界経済の動向に業績が左右されやすい景気敏感株や、海外市場への依存度が高い輸出関連株でした。投資家の間には、米中間の貿易摩擦の激化が世界経済全体の成長を鈍化させ、企業の業績にも悪影響を与えるのではないかという懸念が広がった結果と言えるでしょう。
特に象徴的だったのは、新元号「令和」初の取引日である2019年5月7日から、日経平均がなんと6営業日連続で値下がりしたことです。この急落の引き金となったのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領が中国からの輸入品に対する関税率を10%から25%に引き上げると表明し、2019年5月10日に実際に引き上げを実施したことでした。この動きが、株式市場に大きな動揺をもたらしたのです。
さらに、中国の通信機器最大手である華為技術(ファーウェイ)に対して、アメリカが輸出禁止措置を発動したことも、市場の不安を一層深めることになりました。松井証券の田村晋一ストラテジストは、「リスク資産である株式から、より安全な資産とされる債券への資金の逃避が進んだ」と分析しています。この事態は、単なる貿易問題を超え、技術覇権をめぐる争いが世界経済を揺るがすという深刻な認識を、投資家に与えたと言えるでしょう。
この期間、SNSでは「株価暴落」「リスクオフ」といった言葉がトレンド入りし、「このまま世界恐慌になるのでは?」「自分のポートフォリオが真っ赤だ」といった悲観的な投稿が相次ぎました。一方で、「これは買いのチャンスかもしれない」と、割安になった銘柄を探る個人投資家も見受けられ、市場の混乱に対する様々な反応が飛び交っていました。
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下落を主導した業種と海外投資家の動向
2019年5月の株価騰落率を業種別に見てみると、下落を主導したのは**海運(16%安)や鉄鋼(13%安)**といった、景気に敏感に反応する銘柄でした。これらのセクターは、世界的な物流やインフラ投資の動向に直結するため、景気減速懸念が直撃した形です。また、**機械(11%安)や電気機器(10%安)などの輸出関連株も軒並み値を下げました。個別銘柄では、半導体製造装置関連のSCREENホールディングス(30%安)や電子部品大手のTDK(24%安)**といったハイテク株の売りが目立ち、サプライチェーンの混乱が懸念されたことが分かります。
日本株の売り越しを強力に推し進めたのは、海外投資家でした。東京証券取引所などの市場全体の売買動向を見ると、海外勢は現物株と先物取引を合わせて、5月24日までに約1.7兆円もの巨額な売り越しを記録しています。これは、米中貿易摩擦という世界的なリスクの高まりに対し、海外の機関投資家が、真っ先に世界経済との連動性が高い日本株から資金を引き揚げたことを示しています。
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割安感と今後の市場の展望
しかし、このような大幅な下落によって、現在の日本株には割安感が出始めているとの指摘もあります。クレディ・スイス証券の松本聡一郎日本最高投資責任者は、「日本株は世界経済との連動性が非常に高いため、今後の世界経済が大きく崩壊しないという見方が広がりさえすれば、海外投資家が再び日本株を再評価し、資金を戻してくる可能性が高い」と述べています。
私は、この相場こそが投資家としての真価が問われる局面だと考えます。現在の世界経済は、米中間の動向に大きく振り回される不安定な状況にありますが、短期的なノイズに惑わされず、日本企業の持つ本質的な競争力や、技術力の高さを冷静に見極めることが重要です。確かに株価は一時的に下落しましたが、これは優良な企業を安価に手に入れるチャンスとも捉えられます。世界経済が立ち直りの兆しを見せた際、真っ先に恩恵を受ける景気敏感株や輸出関連株こそ、今こそ注目すべき銘柄群と言えるでしょう。
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