2020年5月30日、香川県に、一人の熱いロマンを形にした鉄道博物館が誕生し、注目を集めています。JR予讃線比地大駅(ひちだいえき)を降りてすぐの場所に、手作りの線路で囲まれた建物が突如出現する様子は、まるで秘密基地のようで、すでに多くの鉄道ファンや地域住民の関心を集めているようです。この博物館を設立したのは、長年にわたり鉄道グッズを収集してきた木川(きがわ)さん。そのコレクションの数はなんと3000点以上にも及び、それらを一堂に展示し、多くの人々に楽しんでもらいたいという情熱から、この夢のような場所が生まれました。
館内に入ると、まず目につくのは、蒸気機関車の大きな車輪と、歴史的な列車のエンブレムです。特に、豪華夜行列車として有名な「オリエント急行」のエンブレムのレプリカが出迎えてくれるのは圧巻でしょう。オリエント急行とは、パリとトルコのイスタンブールを結んでいた、映画の舞台にもなった伝説的な列車です。木川さんは、他にも本物の列車の行き先標など、国内外を旅して手に入れた欧米の貴重な収集品を惜しみなく展示しています。販売会で手に入れたり、知人から譲り受けたりしたという品々は、一つ一つに物語があり、訪れる人々を魅了するでしょう。
この博物館の大きな魅力は、単に展示品を並べるだけでなく、訪れた人がゆっくりと時間を過ごせるようにカフェを併設している点です。しかも、そのカフェには本物のシルバーシートが椅子として用意されているというから驚きですね。シルバーシートとは、現在は「優先席」とも呼ばれますが、かつて高齢者や身体の不自由な人のために設けられていた特別な座席のことです。幼い頃、お父様の送り迎えで訪れた観音寺駅で見た蒸気機関車の力強さに魅せられたという木川さんの鉄道愛は、まさに筋金入りだと言えるでしょう。
「不器用だけれど集中力はある」という木川さんの言葉は、彼の過去の輝かしい功績の裏打ちがあります。実は木川さん、かつて棒高跳びの選手として世界と戦った経験を持つ、驚くべき経歴の持ち主なのです。高校時代には当時の高校記録を樹立し、1974年のテヘランアジア大会では見事金メダルを獲得しています。さらに世界大会では銅メダルを2度獲得するなど、その集中力と努力は誰もが認めるところでしょう。80年のモスクワ五輪出場も視野に入っていましたが、選考会直前の怪我という「人生最大の不覚」で出場を断念したという、惜しい過去もお持ちです。
その後、木川さんは体育教師として教壇に立ち、教え子が五輪に出場するという形で夢を繋いでくれました。退職後、自宅を訪れた知人が彼の膨大な鉄道コレクションを見て感動する姿に触発され、この博物館の構想が生まれたそうです。しかし、退職金だけでは資金が足りず、クラウドファンディングを利用して資金を調達したというエピソードは、彼の情熱と周囲の期待の大きさを物語っています。クラウドファンディングとは、インターネットを通して不特定多数の人から資金を募る方法で、このプロジェクトへの共感の輪が広がったことが伺えます。
SNS上では、「元アスリートの人がこんな本格的な博物館を作るなんてすごい!」「香川に鉄道ファンが熱くなる場所ができて嬉しい」といった喜びの声が上がっています。また、「展示品が本物ばかりで感動した」「カフェのシルバーシートに座ってみたい」という感想も多く見受けられ、木川さんの個人のロマンが、多くの人々の心に響いていることがわかります。個人的には、一つのことにこれほどまで集中し、情熱を傾けられる姿勢は、アスリート時代に培われたものだと強く感じます。目標に向かって真っすぐ進むそのエネルギーが、博物館という形で結実したのでしょう。
ジオラマに込められたロマンと郷土愛
博物館の中央には、木川さんのこだわりが詰まった壮大なジオラマが設置されています。ジオラマとは、風景や都市などを立体的に再現した模型のことですが、ここには地元の風景が再現され、その周りを鉄道が走るという、郷土愛あふれる作品になっています。しかも、その風景の中には、木川さんが最後に勤務した中学校の校庭があり、そこで棒高跳びをしている木川さんの姿が再現されているという、遊び心とロマンに満ちた演出も魅力です。
ジオラマを制作する木川さんの手元は、体育教師らしいがっしりとしたものだそうですが、その眼差しには、子供の頃から鉄道に夢中だった無邪気な楽しみが垣間見えるでしょう。香川に生まれ、世界と戦い、再び地元に戻ってきた木川さんの人生そのものが、この博物館に凝縮されていると言っても過言ではありません。支えてくれた多くの人々、そして幼い頃からの興味と感動を分かち合いたいという彼の思いは、「地球に帰還する宇宙戦艦ヤマトの気持ち」と表現されており、その熱い使命感が伝わってきます。
この鉄道博物館は、単なる趣味のコレクションの展示場所ではなく、一人の人間が抱いた大きなロマンと、地元への愛、そして人との繋がりが生んだ、唯一無二の場所なのです。展示品はもちろんのこと、木川さんの歩んできた道のりと、その情熱に触れることで、訪れる人々に新たな感動と夢を与えてくれるに違いありません。ぜひ一度、この鉄道愛あふれる博物館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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