🏘️旅のスタイルを変える!進化系ゲストハウスは「交流の拠点」へ:SNS時代の新しい旅と地域活性化の形

かつて、ゲストハウスといえば、コストを抑えたい若者や、バックパッカーと呼ばれる外国人旅行者が主に利用する、素泊まりの簡易宿泊施設というイメージが強かったことでしょう。しかし、その概念は大きく変わり始めています。最近では、おしゃれなカフェや雑貨店を併設し、家族旅行や女性の一人旅、さらにはシニア層といった幅広い客層を惹きつける、地域交流の拠点としての役割を担う「進化系ゲストハウス」が全国で続々と誕生しているのです。その背景には、単に宿泊するだけでなく、現地の人々との触れ合いや、その土地ならではの心地よさを求める、現代の新しい旅の価値観が見て取れます。

例えば、大阪市福島区にあるゲストハウス「由苑」は、築100年を超える元料亭をリノベーションした趣のある空間が魅力です。宿泊スペースは2階にありますが、1階にはカフェやカレー屋、雑貨店が営業しており、宿泊客以外にも地域住民が日常的に訪れる場となっています。仕事前にコーヒーを飲みに来る近所の居酒屋の常連客や、スタッフと地元の話題で盛り上がる宿泊客など、自然な会話から交流が深まっていくのがこの場所の特色と言えるでしょう。突然のたこ焼きパーティーや花見、はたまた元号が「令和」に改まった際の書き初めイベントなど、宿泊客と地元客を巻き込んだ突発的な交流イベントも盛んに行われているようです。こうした「皆で盛り上がった経験」が忘れられず、リピーターになる方も多いと聞きます。

「由苑」のマネジャーである徳永芳郎さんも述べているように、客層は多様化しています。4人部屋の個室を利用する家族連れの姿も増え、また、シニア層や女性の一人旅も増加傾向にあるとのことです。手頃な価格帯であることに加え、予期せぬ出会いが楽しめる点も、就職活動中の学生にとって大きなメリットです。例えば、福岡から来た専門学校生の堀絢花さんは、初めてのゲストハウス利用ながらも、慣れない面接の緊張を、周りの人々に相談することで和らげることができたと語っています。このように、ゲストハウスは単なる宿泊の場ではなく、旅の不安を共有し、心の安らぎを得られる「セーフティネット」のような役割も果たしていると言えるでしょう。

ゲストハウスの明確な定義は難しいものの、かつては1人1泊2,000円から3,000円台で泊まれる代わりに、トイレやシャワーが共用で食事は自前、という素泊まりのスタイルが一般的でした。しかし、最近では平均価格が3,000円から4,000円台とやや上昇しつつも、内装がおしゃれになり、個室が増えるなど、快適性が向上しています。さらに、カフェなどを併設することで、泊まらない地域の方も気軽に立ち寄れる「地域のコミュニティスペース」としての機能も兼ね備えるようになったのです。

「ゲストハウスガイド100」の著者で、情報サイトを運営する前田有佳利さんによれば、全国の施設数は1,000カ所を超え、この10年間で3倍から4倍にも増加しているそうです。前田さんは、その理由としてリーマン・ショックや東日本大震災を経て、人々の価値観が変化し、「地域や人との交流」や「居心地の良さ」に注目が集まったことを挙げています。加えて、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及により、誰もが簡単に情報を共有し、人と人との繋がりを築きやすくなったことも、このブームを後押ししている大きな要因だと考えられます。旅先での交流を求める現代のニーズと、それを実現する技術的な背景が、ゲストハウスの進化を支えていると言えるでしょう。

このブームの背景には、地域に根差し、その魅力を発信しようと奔走するオーナーたちの熱意があります。徳島県美馬市にある「のどけや」のオーナー、柴田義帆さんもその一人です。裕福な商家の面影を残す「うだつ」(虫よけや防火を目的とした壁を隣家との境に設けたもの)の街並みが印象的なこの地域に、「地方にも人々が集まる場所を創りたい」という思いで、大阪から移住し開業しました。ミュージシャンとして、またライブハウス経営にも携わっていたユニークな経歴を持つ柴田さんと、漫画家の奥様のセンスが相まって、「のどけや」は文化的な香りの高い場所となり、やがてクリエーターが集まる場所へと変貌を遂げています。周辺には古民家カフェや、共同で仕事ができるコワーキングスペースも誕生し、街全体の活性化に繋がっている状況が見て取れます。

さらに、街の魅力を発信するアプリ開発や、空き家や空きスペースを定額で利用できるシェアサービスといった、新たな取り組みも始動しています。旅と音楽が好きで柴田さんと意気投合したという、パソナグループの加藤遼さん(35歳)は、東京から毎月のように美馬市に通い、柴田さんのビジネスやイベントにも関わっているとのことです。ゲストハウスを中心とした人の繋がりが、地域活性化のための新しいビジネスやコミュニティを生み出す原動力になっていることは間違いありません。

静岡県熱海市にある「MARUYA」も、カフェ・バーを併設することで、地元の常連客と宿泊客を繋ぐ役割を担っています。週末にはスタッフによる街歩き、金曜日の夜には「グルメの日」と題して地元の食材を味わうイベントを開催するなど、地域との触れ合いを重視した活動を展開しています。オーナーの市来広一郎さんは、「熱海をもうひとつの居場所と感じてほしい」と語っています。また、岡山県西粟倉村で温泉やカフェ・レストラン付きの「あわくら温泉元湯」を運営する井筒耕平さんは、「地域と触れ合うための玄関のような存在でありたい」と考えています。このように、ゲストハウスは単に寝泊まりする場ではなく、地域社会への「入り口」として機能し、新たなコミュニティーを生み出す役割を担い始めているのです。

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多様化するゲストハウスのサービスと定額制の登場

施設数の増加に伴い、ゲストハウスの差別化や多様化も進んでいます。例えば、佐賀県唐津市の「少女まんが館Saga」は、私設図書館と一体となっており、宿泊客は蔵書1,600冊を読み放題というユニークなサービスを提供しています。また、札幌市の「雪結(ゆゆ)」は学童保育を併設するなど、従来の宿泊施設の枠を超えた多様なサービスが登場しています。

東京・浅草橋の「Little Japan」は、地元の人にランチ作りを依頼するなど、地域との交流を特に大切にしている施設です。この施設は、国内外の提携先ゲストハウスを月額15,000円から泊まり歩ける定額制サービスを開始し、大きな反響を呼んでいます。近所の旅行アプリ開発会社に勤める山本知樹さん(30歳)は、このサービスを利用するヘビーユーザーで、「会社まで徒歩15分という立地が魅力的で、滞在する人々との交流が仕事にも役立っている」と話しています。ゲストハウスは、旅人だけでなく、地域に住みながらも新しい繋がりや刺激を求めるビジネスパーソンにとっても、非常に価値のある場所となっているのです。記事が制作された2019年6月1日時点での状況を踏まえると、これらのゲストハウスが提供する「交流」と「コミュニティ」の価値は、今後ますます高まっていくことが予想されるでしょう。

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