🇯🇵**【2019年度設備投資の最前線】** 内需型企業が牽引!JR東日本の大幅増額とトヨタの慎重姿勢に見る、世界景気リスクをにらむ日本企業の経営判断

2019年度の日本企業の設備投資の動向は、国内市場に基盤を持つ企業が力強く成長を牽引しているのが特徴です。その筆頭が、JR東日本などの内需型企業でしょう。一方で、製造業全体も高い投資水準を計画してはいますが、世界経済の失速懸念が影を落としており、投資計画の実行には海外の景況感を見極める経営者の慎重な判断が求められる状況と言えます。

特に目を引くのが、東日本旅客鉄道(JR東日本)の積極的な姿勢です。同社の深沢祐二社長は、2020年の東京オリンピックに向けたインフラ整備を重要な投資テーマとして挙げています。具体的には、利用者の多い千駄ケ谷駅や山手線の駅などでホームドアの整備を優先的に進める方針で、山手線の新駅である高輪ゲートウェイ駅も大会開幕前の完成を目指して工事が進行中です。同社は2019年4月から2020年7月までに新たに15駅にホームドアを設置するなど、前年度比で21.9%増となる7,680億円もの大規模な投資を計画しており、国内インフラの刷新に邁進するでしょう。

また、深刻化する人手不足や人件費高騰を補うための合理化投資も根強く続いています。ここで言う合理化への投資とは、作業の効率化や省人化を目的とした設備への投資を指します。小売業やサービス業では、設備投資全体の10%以上がこの合理化を目的としているのです。例えば、ファミリーマートは従業員の業務負担を軽減するため、利用客自身が精算を行うセルフレジを4,000台も増設する方針です。さらに、大和ハウス工業はネット通販の拡大を背景とした物流施設への投資を強化し、前年度比35.7%増の1,500億円を計画しています。この流れは業種全体にも波及し、倉庫・運輸関連の設備投資は20.6%増と大幅な伸びを示しています。

製造業全体の設備投資計画は前年度実績の10.1%増と同様に高い水準で、12.2%増を見込んでいます。しかし、グローバルに事業を展開する企業の投資スタンスには濃淡が見られます。特に業績回復が著しいソニーは、自動車の自動運転技術などで「電子の目」として不可欠な半導体イメージセンサーの増産に向けて、前年度比63.2%増の4,000億円と大幅な積み増しを打ち出しました。一方で、自動車産業の盟主であるトヨタ自動車は、1兆4,500億円と投資額自体は巨額であるものの、前年度比で1.1%減とわずかに減少する計画となっています。

トヨタの豊田章男社長は、「未来への投資を遅らせないことが非常に重要な課題だ」と述べ、次世代車の開発に不可欠な技術であるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への取り組みの重要性を強調しています。このCASE技術とは、自動車業界の新たなトレンドを指す専門用語です。しかし、トヨタが投資のアクセルを思い切り踏み込めない背景には、米中貿易戦争の激化に伴う中国経済の失速リスクがあります。国際通貨基金(IMF)は2019年4月の時点で、中国景気が2019年後半から持ち直すという見通しを示していますが、足元の工業生産などの経済統計は依然として冴えない状況が続いているのです。

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世界景気リスクと過去の教訓から導かれる経営者の決断

この世界経済の不透明感が、日本企業の設備投資の実行フェーズに大きな影響を及ぼす可能性は否定できません。過去には、リーマン・ショックが発生した2008年度の設備投資動向調査で、当初の計画は前年度比3.7%増と強気でしたが、最終的な実績は6.1%減へと大きく落ち込みました。当時も年度初めには積極的に投資を計画したものの、世界経済の急変を受けて、投資の先送り判断が相次ぎ、翌2009年度の設備投資も22.7%減と大きく落ち込んだという苦い教訓があります。このような過去の事例を鑑みると、企業経営者には環境変化への臨機応変な対応力が強く求められると言えるでしょう。

三菱電機の杉山武史社長は、自動車の電動化への取り組みと投資が「2年前倒しになっている」と説明し、高水準の投資を正当化しています。しかし、取引先である中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)について、「もし通信インフラの受注ができなくなれば、当社の売り上げも下がる。今は様子を見守るしかない」と、米国による規制強化の動きに警戒感を滲ませる発言も飛び出しています。グローバルに展開する企業にとって、特定の国の政治的・経済的な動向が、自社の投資判断に直結する非常に難しい局面を迎えているのです。

さらに、日立製作所の東原敏昭社長は、「期待する以上の効果を出しているかを見ていく。そうしないとグローバル企業にはなれない」と述べ、設備投資がどれだけの利益回収をもたらしたかを重視する新たな指標を導入する理由を説明しました。これは、単に投資額を増やすだけでなく、その投資の質をいかに高めるかという点に、企業の経営の軸足が移ってきていることを示唆しています。世界経済に失速の懸念が広がる中、積極投資とリスク回避のバランスをどう取るか。経営者の決断は波乱含みの展開となるでしょう。

この調査は、日本経済新聞社が年2回定期的に実施している「設備投資動向調査」に基づくものです。今回は2019年度当初計画(2019年4月30日時点)の状況を集計しており、上場企業と資本金1億円以上の有力企業、計2,048社(銀行・証券・保険を除く)を対象としています。この結果は、当時の日本企業が世界経済の大きなうねりの中で、攻めと守りの経営戦略を模索していたことを明確に示していると言えるでしょう。

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