3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2019」がいよいよ秋会期を迎えます。2019年9月28日から11月4日までの期間、丸亀市の離島・本島(ほんじま)が新たな舞台として加わり、瀬戸内の島々が熱狂に包まれることでしょう。本島へは丸亀港からフェリーで約35分という好アクセスですが、実は今、港のすぐそばにある丸亀城下町が「島へ渡るだけではもったいない」と言わんばかりの盛り上がりを見せているのをご存知でしょうか。
前回の芸術祭では、残念ながら市街地まで足を運ぶ観光客が少なかったという課題がありました。しかし、今回は違います。地元の有志たちが手を取り合い、港から商店街、そして名城・丸亀城へと続く魅力的な導線を作り上げました。SNSでも「丸亀の商店街が熱い」「うどんだけじゃない丸亀を見たい」と期待の声が上がっており、単なる通過点ではない、深みのある観光体験が期待されています。
地元の愛が詰まった「城下町の芸術祭」と秘蔵のアート展示
2019年9月28日の開幕当日、JR丸亀駅近くの通町商店街では「城下町の芸術祭」が開催されます。商店街の活性化を願う「シャッターをあける会」が中心となり、ストリートが賑やかな「市場」へと変貌を遂げるのです。地酒や希少糖(自然界にわずかしか存在しない糖の総称)を用いたハイボールなど、この土地ならではの味覚が揃います。地元アーティストによる猫モチーフの雑貨販売もあり、感性を刺激されるひとときを過ごせるはずです。
さらに注目すべきは、丸亀市出身の世界的な画家・猪熊弦一郎(いのくまげんいちろう)氏のプロジェクトです。2019年9月28日から2020年3月にかけて、市内の飲食店など30店舗で、氏のスケッチブックに描かれた未公開作品の複製画が展示されます。「アートはバイタミン(ビタミン)」という言葉通り、日常の風景の中に溶け込んだ芸術は、私たちの心に栄養を与えてくれるに違いありません。
私個人としては、こうした「街全体を美術館にする」試みに強く共感します。大規模な展示も素晴らしいですが、地元の喫茶店でコーヒーを飲みながら、ふと巨匠の素描に出会える体験こそ、旅の醍醐味ではないでしょうか。独自のガイドマップを片手に、路地裏の名店や古き良きお寺を巡る。そんな「ディープな丸亀」の歩き方こそ、今回の秋会期における最高の贅沢と言えるでしょう。
夜の丸亀城を彩る幻想的な光の演出「キャッスルロード」
日が暮れてからも丸亀の夜は終わりません。日本一の高さを誇る石垣で知られる丸亀城では、2019年11月24日まで「丸亀城キャッスルロード」が開催されています。今年は夜型観光をさらに充実させるべく、期間を例年より4週間も延長してゲストを迎えます。最大の見どころは、新たに導入されたプロジェクションマッピング(建物などの立体物に映像を投影する技術)です。
暗闇に浮かび上がる丸亀藩主の家紋と、伝統工芸である「丸亀うちわ」を用いた柔らかな灯りが、天守へと続く坂道を幻想的に照らし出します。昼間は瀬戸内の島々でアートを堪能し、夕暮れは城下町で地元の食に舌鼓を打ち、締めくくりに夜の城を散策する。これほど完璧な旅のプランが他にあるでしょうか。主体の異なる様々な取り組みが一つに溶け合い、2019年の秋、丸亀はかつてない輝きを放っています。
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