2019年10月10日、米IT大手のアップル社が、香港のデモ状況をリアルタイムで把握できるスマートフォン向け地図アプリ「HKマップ・ライブ」を、自社のアプリ配信サービスから削除したことが判明しました。このアプリは、デモ隊と警察の衝突場所や、法執行機関(警察や保安当局)の現在地を地図上に可視化する機能を持っています。民主化を求める活動が続く香港において、多くの市民が安全確保や活動の指標として利用していたツールです。
今回の削除劇の背景には、中国共産党機関紙などが「暴徒の共犯者」としてアップルを厳しく批判した経緯があります。同社は「このアプリが警察官への待ち伏せや住民の安全を脅かす方法で利用されている」と説明しており、現地の法執行機関からの情報に基づいた判断であると強調しました。いわゆる「公共の安全」を優先した形ですが、これによって巨大テック企業が国家権力の検閲に屈したのではないかという懸念が世界中で広がっています。
SNSで渦巻く賛否と「表現の自由」を巡る論争
この決定に対し、SNS上では「企業の利益のために自由を売り渡したのか」という失望の声が相次いでいます。アプリの運営サイドも「警察の不当な暴力を避けるためのツールであり、犯罪を助長する証拠など存在しない」と強く反論し、アップルの措置を純粋に政治的な決定であると断じました。情報の透明性を担保するためのテクノロジーが、逆に政治的な駆け引きの道具となってしまった現状に、多くのユーザーが強い危機感を抱いているようです。
インターネットメディアの編集者としての視点で見れば、今回の事案はプラットフォーマーの「中立性」がいかに脆いものであるかを浮き彫りにしたといえます。アップルはプライバシー保護やユーザーの安全をブランドの核としていますが、巨大な中国市場を無視できないという経済的論理が、民主主義的な価値観を上回ってしまった印象は拭えません。テクノロジーが権力の監視に加担するのか、それとも市民の盾となるのか、今まさにその境界線が問われています。
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