金属市場に冷たい風が吹き抜けています。ステンレス鋼の主要な原料として欠かせないニッケル価格が、約3カ月ぶりの低水準まで落ち込みました。2019年11月11日のロンドン金属取引所(LME)において、指標となる3カ月先物価格は1トンあたり1万5565ドルを記録し、前週末と比較して実に625ドル(4%)もの急落を見せています。
日本時間の2019年11月12日夕刻における時間外取引でも、1万5600ドル近辺での力ない推移が続いていました。数カ月前までの強気なムードはどこへやら、市場には冷ややかな空気が漂っています。SNS上でも「ニッケルがこんなに下げるとは予想外」「景気後退の足音が聞こえてくる」といった、先行きを不安視する投資家たちの声が数多く上がっている状況です。
そもそもニッケル相場は、世界最大の鉱石生産国であるインドネシアが、2019年9月に「2020年から未加工鉱石の輸出を禁止する」という方針を打ち出したことで、一時5年ぶりの高値を記録していました。供給網が断たれることへの恐怖が買いを誘ったわけですが、現在はその懸念を「世界的な需要の冷え込み」という負のエネルギーが完全に上回ってしまったと言えるでしょう。
中国の貿易停滞が引き金に?実需不足が招く弱気相場の背景
価格下落の決定打となったのは、非鉄金属の巨大消費国である中国の経済指標です。2019年10月の中国の輸出入データが低調な結果に終わり、製造業の停滞が浮き彫りになりました。これにより、市場関係者の間では「インドネシアの供給不安よりも、足元のステンレス需要の乏しさの方が深刻だ」という認識が急速に広がっています。
専門家である住友商事グローバルリサーチの本間隆行経済部長も、将来的な需要回復への期待感が持てない現状では、軟調な推移が続くとの厳しい見通しを示しています。先物価格というのは、半年後や一年後の未来を映す鏡のようなものですが、今のニッケル市場の鏡に映っているのは、産業界のエンジンがゆっくりと回転を落としている寂しい光景なのかもしれません。
個人的な見解を述べさせていただくと、今回の下落は単なる一時的な調整ではなく、実体経済の減速を知らせる警鐘だと捉えています。いくら供給サイドで規制がかかろうとも、使う側の購買意欲がなければ相場は維持できません。今は「資源の希少性」よりも「モノが売れないリスク」を注視すべき時期に来ており、投資家にはこれまで以上に慎重な判断が求められるでしょう。
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