2020年1月1日、世界中から熱狂的な支持を集めるアニメ「攻殻機動隊」シリーズを手がける神山健治監督の、非常に興味深いインタビューが公開されました。近未来を描くサイバーパンク作品の金字塔は、一体どのような視点から生み出されているのでしょうか。
神山監督によると、未来のガジェットやサービスを想像するだけでなく、あえて「いま」という現実を深く咀嚼し直すことが重要なのだそうです。拡大し続ける貧富の格差、世代間の摩擦、そして急速なグローバル化など、現代社会が抱えるリアルな問題点こそが、作品の強固な土台となっています。
AI(人工知能)は人間のクリエイティビティを奪うのか?
現代社会を円滑に運営するシステムとして、インターネットやAIの存在は欠かせません。AIとは「人工知能」と呼ばれ、人間の脳が行う知的な学習や推論をコンピュータ上で模倣した技術を指します。2019年頃からはスマートスピーカーの話題なども落ち着きを見せ、AIが私たちの日常生活にすっかり定着した印象を受けます。
過去にAIが執筆した小説が文学賞の1次審査を通過したニュースは記憶に新しいでしょう。監督自身も「攻殻機動隊」の脚本をAIに書かせてみる実験を模索したそうですが、現時点では技術的なハードルが高く実現には至らなかったと明かしてくれました。
SNS上でも「AIにクリエイティブな仕事ができるのか?」という議論は白熱しており、「私たちの仕事が奪われるかも」と不安視する声も多く見受けられます。しかし監督は、脚本や作曲という形は変われど、DJのように既存のものを再構築する新たな仕事が生まれ、人間が完全に不要になることはないと予測しているのです。
シンギュラリティと向き合うポジティブな未来志向
新作を制作する上で、2045年頃にAIが人類の知能を超える転換点「シンギュラリティ(技術的特異点)」という概念は避けて通れません。環境問題などを背景に、テクノロジーを悪とみなすアーティストも多い中、神山監督は決して悲観論に陥っていないのが印象的です。
一度手にした技術を手放し、原始的な狩猟採集社会に戻ることは不可能です。「技術や科学は将来に希望をもたらすものでなければならない」という原作者・士郎正宗氏の信念を受け継ぎ、進化の過程で生じる問題は、テクノロジーを活用して解決しながら前進するしかないという力強いメッセージを投げかけてくれます。
現代の息苦しい社会を、徹底的に管理された暗黒世界「ディストピア(反理想郷)」だと感じる人も少なくないでしょう。インターネットが普及した時点で、すでに私たちはそのディストピアに取り込まれているのかもしれません。しかし、それを逆手にとって有効活用していくのが次世代の若者たちの役目なのです。
次世代へ託すバトンと編集部の視点
一方で監督は、現代の若者を取り巻く環境に警鐘を鳴らしています。教育現場で学ぶべき基礎が変わったのに、社会のルールが変化した事実が教えられていないのではないかという指摘です。今の子どもたちは非常に賢い反面、視野が狭くなっているように感じられる瞬間があるとも憂慮しているようです。
一人のメディア編集者として、私はこの神山監督の視点に深く共感します。新しい挑戦の芽が摘まれやすい窮屈な時代だからこそ、テクノロジーを恐れるのではなく、自らの手で使いこなすしたたかさが必要不可欠です。未来を創造するのはAIではなく、他ならぬ私たち人間自身の選択と行動なのだと強く確信させられました。
2020年1月1日という新たな年の幕開けにふさわしい、希望に満ちた洞察にあふれるインタビューでした。革新的なテクノロジーと人間社会がどのように融合していくのか、これからの「攻殻機動隊」が提示する新たなビジョンから目が離せません。
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