世界のエネルギー市場で、今まさに驚くべき地殻変動が起きています。かつて原子力開発の最前線を走っていた日米欧の影が薄れる中、ロシアの原子力技術が圧倒的な存在感で世界を席巻しているのです。その象徴とも言えるのが、ロシア国営企業「ロスアトム」が開発した世界初の浮体式原子力発電所、通称「海上原発」でしょう。2019年8月にはシベリア沿岸へ向けて航行を開始し、電力インフラの乏しい極地へ電気と熱を供給する画期的な試みが始まっています。
この海上原発は、船の上に原子炉を搭載して移動できるようにした革新的な発電システムです。インフラ整備が遅れている発展途上国などへの輸出構想も持ち上がっており、世界のエネルギー供給のあり方を根本から変えてしまう可能性を秘めています。安全性への懸念を指摘する声もありますが、背に腹は代えられない電力不足に悩む国々にとっては、極めて魅力的な選択肢に映るはずです。ネット上でも「ついにSFの世界が現実になった」「環境リスクが心配」と大きな反響を呼んでいます。
次世代原子炉の頓挫とロシアの独走状態
日本をはじめとする西側諸国が停滞する中、ロシアは着実に地歩を固めています。日本はフランスと共同で次世代の「高速実証炉」と呼ばれる、使った以上の燃料を生み出せる夢の原子炉開発を進めていました。しかし、巨額の予算を投じながらも2020年度の予算要求で建設関連の盛り込みを打ち切り、事実上の開発断念へ追い込まれています。一方でロシアは、すでに2015年から実証炉の運転を開始しており、2020年代中には商用炉の建設までも計画している状況です。
かつて日本は「もんじゅ」などのプロジェクトに1兆円を超える研究開発費を投じてきましたが、実証炉の手前で頓挫してしまいました。そんな日本に対し、ロシア側は共同研究を持ちかけるなど、水面下で秋波を送っています。さらに、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業における溶融燃料の分析でも、ロシア企業が日本のシンクタンクと連携を深めているのです。ロスアトム社が日本支社を新設したことからも、その積極的な姿勢がうかがえます。
米国をも揺るがすウラン供給の「依存」というアキレス腱
ロシアの脅威はアジア圏に留まらず、超大国である米国にも暗い影を落としています。実は、米国の原子力発電を支えるウラン製品の約4割が、ロシアをはじめとする旧ソ連諸国からの供給に依存しているのが現状です。ウランを原発で使える状態にする「ウラン濃縮技術」は、核兵器開発にも直結する極めて機微な技術であり、安全保障上の大きなリスクとなります。米国議会では、この過度な依存状態に対して強い危機感を表明する声明が出され、激しい論争が巻き起こりました。
1979年に発生したスリーマイル島原発事故以降、米国の原子力産業は衰退の一途をたどってきました。かつての宿敵であったロシアにエネルギーの命綱を握られているという皮肉な現実は、西側諸国全体の足元がいかに脆いかを物語っています。原発事故を契機に世界をリードする地位を完全に失ってしまった日本も含め、私たちはエネルギーの安定確保という極めて重い課題を突きつけられていると言えるでしょう。
編集部が斬る!エネルギーの未来を握るのは誰か
国や民間企業、自治体に権限が分散して身動きが取れない日米欧とは対照的に、国営企業が一貫した体制で国策を推し進めるロシアの強さが際立つ結果となっています。独自の技術と強固な体制で、中国やインドといった大国をも巻き込み、世界で約35基もの原発輸出計画を進めるロシアの勢いは止まりそうにありません。SNSでは「日本の技術力の低下が悲しい」「安全保障の観点からエネルギー自給を真剣に考えるべきだ」といった、危機感を募らせるユーザーの声が目立ちます。
一度失った技術や産業の優位性を取り戻すことは、容易なことではありません。しかし、単にロシアの独走を指をくわえて見ているだけでは、未来のエネルギー安全保障は完全に崩壊してしまいます。日本としても、過去の失敗を真摯に総括した上で、安全性を最優先にした新たなエネルギー戦略を国家規模で再構築することが急務ではないでしょうか。他国に生命線を握られないための、毅然としたビジョンとスピーディーな決断が今こそ求められています。
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