大和証券元会長が明かす「組織の革命」:トップが現場を見れば会社は劇的に変わる

ビジネスの現場において、トップと現場の距離感は組織の成否を分ける重要なカギとなります。大和証券で長年舵取りを担った元会長が、自身の経験を通して語ったのは、一見地味ながらも極めて強力な「眼差し」の力でした。役職という肩書きに甘んじることなく、会長になっても自ら支店へ足を運ぶ。その姿勢の根底には、社員一人ひとりの声に真摯に向き合いたいという強い願いがあったのです。

当時、大和証券には「自己申告制度」という仕組みがありました。これは支店長や部長といった上司を通さず、仕事の悩みや将来のキャリアビジョンを直接人事部へ伝えられる制度です。しかし、どれほど優れたシステムも、それが機能しなければ意味を成しません。かつては形骸化していたこの制度を、元会長は「トップ自らが目を通す」ことで息を吹き込みました。

評価が高い社員や語学試験で優秀なスコアを収めた社員の自己申告書を自ら取り寄せ、読み込む。トップが本気で目を通していると分かれば、人事部も真剣に向き合い、社員もまた期待に応えようと情熱を込めて書くようになります。この良い循環こそが、組織を活性化させるための最初の一歩だったのでしょう。

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眠れる才能を掘り起こす「眼差し」の力

京都支店でのあるエピソードは、この人事制度がいかにして才能を見出したかを物語っています。英語試験で満点に近い成績を収めていた一般職の女性社員に対し、偶然来日したロンドン拠点の女性部長のアテンドを依頼した時のことです。彼女は英語だけでなく、フランス語まで流暢に操り、ロンドンからの部長を驚愕させました。

地方の支店で埋もれていた才能が、適材適所の配置によって花開いた瞬間です。その後、彼女は総合職として国際部門へ抜てきされ、華々しい活躍を見せることになりました。かつては優秀な人材を特定の支店が独占し、個人のキャリアの幅を狭めていた証券業界ですが、こうした制度改革によって、社員は自ら希望するキャリアを切り拓けるようになったのです。

SNS上でも、「トップが現場を見ているという安心感こそが、社員のモチベーションを最大化する」「優秀な人材を特定の部署に囲い込むのではなく、全社的な視点でキャリアを設計する姿勢は見習うべきだ」といった称賛の声が多く見られました。まさに、社員の可能性を信じて抜てきする体制が、会社全体に民主的な風を送り込んだと言えるでしょう。

改革の核心は「トップの本気度」にある

元会長は若手社員に対し、自身の若き日を重ね合わせ、「秩父の畑のあぜ道で空を見上げていた自分が社長になれた。この会社は君たちを見ている」と語りかけてきました。本社から遠く離れた地方の支店であっても、頑張りが見えればチャンスが訪れる。そのメッセージが現場を突き動かし、多くの社員が最高のパフォーマンスを発揮する糧となりました。

もちろん、こうした改革は一筋縄ではいきません。例えば、育児休暇や労働時間の適正化といった施策も、制度を作るだけでは不十分です。大切なのは、それを申請しやすい「空気」を作ること。中間管理職が「トップは本気だ」と実感しなければ、現場の隅々にまで改革が浸透することはないでしょう。

現在も引き継がれている「社員の満足度を高めることで業績を上げる」という方針は、大和証券という巨大組織が着実に進化を続けている証です。13年間にわたるリーダーシップを振り返り、後輩から「まるで革命でしたね」と評されたことは、組織の変革がいかに人間味を大切にすべきかを示す、何よりの証明ではないでしょうか。

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