2020年1月29日現在、千葉大学、小湊鉄道、そしてJTB総合研究所という異色のタッグが、観光のあり方を大きく変えようとしています。彼らが着目したのは、次世代の移動サービスである「MaaS(マース)」です。「Mobility as a Service」の略称であるこの言葉は、目的地までの移動を一つのサービスとして捉え、さまざまな交通手段をシームレスにつなぐ概念を指します。このMaaSを観光地で活用し、旅をもっと便利に、もっと豊かにしようというプロジェクトが、まず房総エリアからスタートしました。
1月中旬、千葉県市原市と大多喜町にまたがる養老渓谷において、非常に興味深い実証事業が行われました。旅行者はJTB総合研究所が開発したスマートフォン向けアプリを使い、同行者や旅の目的、体験したいことなどを入力します。すると、AIが個々のニーズに合わせて最適な観光プランを地図とともに提案してくれるのです。
隠れた名所を巡る旅へ、アプリが導く新体験
このアプリには、観音橋や粟又の滝といった有名な観光地だけでなく、あまり知られていない穴場スポットや飲食店など、合計27カ所が登録されています。これまでは「どこに行けばいいか分からない」「交通手段が分からない」といった理由で訪れられなかった場所も、アプリがルートを提案することで旅行者の行動範囲がグッと広がります。JTB総合研究所の松本博樹氏は、「見どころが点在し、認知度が低い場所も多い養老渓谷において、最適な周遊ルートを示すことは滞在時間の長期化につながる」と語っています。
実際、この企画に参加したモニターの大学生からも、「自家用車がないため訪れるきっかけがなかったが、非常に便利で多くの場所を回れた」といった喜びの声がSNSでも上がっています。移動の壁を取り払うことが、地域の魅力を再発見する最大の近道だと言えるのではないでしょうか。
AI活用で解消する「移動」の悩み
養老渓谷のようなエリアでは、バスの本数が限られていたり、タクシーの待ち時間が長くなったりと、移動手段の確保が長年の課題でした。そこで導入されたのが、公立はこだて未来大学発のベンチャー企業「未来シェア」が開発した、AIによる相乗りタクシー配車システムです。利用者が乗降したい場所をアプリに入力すると、AIが付近を走行する最も効率の良い車両を割り当てます。
運行を担う小湊タクシーは、「注文を効率よく集約できるため、従来のバスと組み合わせれば旅行者はより自由に移動できるようになる」と大きな期待を寄せています。まさに、デジタル技術が地域の物理的な距離を縮めた瞬間と言えるでしょう。
今回のプロジェクトは、2019年3月に立ち上がった「地方創生戦略研究推進プラットフォーム」の一環です。千葉県は首都圏にありながら、県民の県内観光消費額が伸び悩んでいるという課題を抱えています。観光資源を線でつなぎ、滞在時間を延ばすことで、地域経済を活性化させるこの試みは、非常に理にかなった戦略だと私は考えます。今後は成田空港周辺や芸術祭の開催地など、展開エリアが広がる見通しです。千葉の旅が、この実験を通じてどう進化していくのか、今から楽しみでなりません。
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