将来の日本を支える子どもたちを育む「教師」という職業が、今、大きな転換期を迎えています。国立大学の雄である東京学芸大学の出口利定学長は、教員志願者の減少という深刻な事態を打破するため、これまでにない画期的なプロジェクトを立ち上げました。2019年07月08日、大学が自らクラウドファンディングで資金を募り、教師の魅力を世の中に広く伝えるという挑戦的な試みが発表されたのです。
文部科学省が公表しているデータに目を向けると、教育現場が直面している厳しい現実が浮き彫りになります。1998年度から2018年度までの公立小学校教員採用試験の推移を確認すると、受験倍率は2000年度の12.5倍をピークに、2018年度には3.2倍まで急落してしまいました。20年間で9.3ポイントもの大幅な低下を記録した事実は、教育界に激震を走らせるに十分なインパクトを持っています。
この数字の背景には、学校現場での採用者数が増えているにもかかわらず、肝心の受験者数がそれに追いついていないという歪な構造が存在します。特筆すべきは、ここ5、6年の間で教員を目指す若者が目に見えて減り続けている点でしょう。このままでは教育の質を維持できなくなるという強い危機感が、今回の「『教師』の魅力発信プロジェクト」という異例の取り組みへと大学を突き動かしたに違いありません。
今回のキーワードである「クラウドファンディング」とは、インターネットを通じて不特定多数の人々から少額ずつ資金を集める手法を指します。大学が公的な予算だけに頼らず、社会全体に教育の重要性を問いかけながら共感の輪を広げようとする姿勢は、非常に現代的で賢明な判断だと言えます。SNS上では「先生の仕事は尊いから応援したい」という期待の声がある一方で、「労働環境の改善が先ではないか」という鋭い指摘も飛び交っています。
編集部としては、動画などを活用した今回のPR活動が、単なるイメージアップに留まらないことを切に願います。現場のリアルな喜びを可視化することは大切ですが、同時に「ブラック」と揶揄されることもある勤務実態の是正についても、社会全体で議論を深めるきっかけにするべきではないでしょうか。優秀な人材が再び教室に戻ってくる未来を作るためには、学芸大のような先進的な発信と、制度そのもののアップデートが車の両輪となって機能することが不可欠です。
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