政府が長らく検討を重ねてきた消費者庁の徳島県への全面移転計画について、大きな転換点が訪れました。2019年08月19日、宮腰光寛消費者担当相は、組織のすべてを徳島へ移す「全面移転」を正式に断念すると発表したのです。この決断の背景には、中央省庁が担うべき複雑な業務の実態が深く関わっているといえるでしょう。
2016年から始まったこの構想は、もともと東京一極集中を是正し、地方を活性化させる「地方創生」の象徴的なプロジェクトでした。しかし、実際に検討を進める中で、大規模な災害などの有事における「危機管理」や、議員からの質問に即座に答える「国会対応」といった業務を、物理的に離れた地方で行うことの難しさが浮き彫りになったのです。
宮腰大臣は徳島市内で行われた記者会見の場で、国会対応などの実務を地方で遂行することは現時点では困難であると、苦渋の決断を滲ませながら説明しました。SNS上では「デジタル化が進んでいるのだからリモートでも可能ではないか」という期待の声がある一方で、「重要事項の決定には対面での調整が不可欠」という現実的な意見も飛び交っています。
「政策研究」の最前線へ!2020年度から拡充される徳島拠点の新たな役割
全面的な移転は見送られたものの、徳島県が積み上げてきた実績が否定されたわけではありません。これまで徳島県庁内に試験的に設置されていたオフィスは、2020年度からさらなる拡充を遂げ、恒常的な「政策研究の拠点」へと生まれ変わります。これは、機能の一部をあえて地方に置くことで、新しい行政の形を模索する試みです。
ここでいう「政策研究」とは、消費者が直面するトラブルの傾向を分析し、それを解決するための法律やルールの土台を作る非常に専門的な業務を指します。徳島県は以前から消費者行政に熱心に取り組んでいる地域であり、現場に近い場所でじっくりと研究に打ち込める環境を整えることは、日本全体の消費者利益に繋がることが期待されています。
編集者の視点から言えば、今回の決定は「全面移転」という派手な看板は下ろしたものの、実利を重視した賢明な着地点だと考えます。すべてを移転させるという理想に固執して行政機能が麻痺しては本末転倒です。むしろ、徳島を「研究のプロフェッショナル集団」が集う場所に特化させることで、地方発のイノベーションが生まれる可能性は十分にあります。
2019年08月現在、この決定は地方移転を巡る議論に一つの区切りを付けました。今後は、2020年度から本格始動する新拠点が、いかにして東京の本庁と連携し、私たちの暮らしを守る新しい知恵を生み出していくのかが注目されます。物理的な距離を超えた、新しい時代の官公庁の在り方を、私たちは見守っていく必要があるでしょう。
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