世界の化学業界を揺るがす、歴史的なビッグニュースが飛び込んできました。中国の国有化学大手である「シノケム(中国中化集団)」と「ケムチャイナ(中国化工集団)」が、農薬や肥料といった農業部門を統合することで合意したのです。この発表を受けて、ネット上やSNSでは「ついに巨大メガ大企業の誕生か」「世界の農業ビジネスの勢力図が完全に塗り替わる」といった驚きと期待の声が次々と上がっています。
両グループの上場子会社が2020年1月23日に戦略的再編の計画を公表したことで、市場の注目は一気に高まりました。もしもこの経営統合が完全に実現すれば、その売上高はなんと合計で約17兆円にものぼる見込みです。これは、これまでの常識を覆すほどの、世界最大規模のメガ化学企業が産声を上げることを意味しています。
石油化学と巨大買収の雄が手を組む理由
ここで、統合を進める2つの企業の強力なバックグラウンドをおさらいしておきましょう。シノケムは、もともと石油製品の輸入を手がける企業から急成長を遂げた石油化学の雄です。化学肥料や農薬の分野に強みを持つだけでなく、フランスの石油大手から南米コロンビアの権益を買い取るなど、グローバルに資源を確保する高い能力を誇っています。彼らの2019年12月期の売上高は、5863億元(約9兆4000億円)という巨額なものです。
対するケムチャイナは、複数の国有化学工場が一つになって生まれた総合化学メーカーになります。彼らの武器は、世界を驚かせた果敢な大型M&A(企業の合併・買収)です。2015年にはイタリアの名門タイヤブランドであるピレリを傘下に収め、さらに2017年にはスイスの農薬最大手シンジェンタを約430億ドル(約4兆7000億円)という天文学的な金額で買収しました。2019年12月期の売上高も5000億元(約8兆円)に達しています。
カリスマ経営者が牽引する国家レベルの戦略
この壮大な統合ストーリーの裏には、1人のカリスマ経営者の存在があります。2016年にシノケムのトップである董事長(会長職)に就任した寧高寧氏です。同氏は、国有食品大手の中糧集団を優良企業へと育て上げた実績を持つ人物で、経営不振に苦しんでいたシノケムの再建を託されました。中国政府は、大型買収で勢いに乗るケムチャイナとシノケムを融合させることで、国際的な競争力を極限まで高める青写真を描いたとされています。
寧高寧氏は2018年からケムチャイナの董事長も兼任するようになり、両社の深い連携を模索し続けてきました。その具体的な第一歩として、2020年1月5日にケムチャイナがシノケムから農業向け事業を取得することで正式に合意したのです。これによって農業ビジネスのスケールメリット(規模が大きくなることで得られる経営上の優位性)を追求し、収益力を劇的に改善させる狙いがあるのでしょう。
編集部が見る未来とグローバル展開への課題
今回の発表について私は、単なる2社の中身の入れ替えにとどまらず、中国が国を挙げて世界の食糧・農業インフラの主導権を握りにきた明確なサインだと確信しています。業界内からは、ゴムやタイヤといった他の事業部門でも連携が深まり、最終的な全面統合へ突き進むのではないかという予測も立っている状況です。SNSでも「シンジェンタやピレリの技術がどうシナジー(相乗効果)を生むのか楽しみ」と、今後の展開にワクワクする声が寄せられています。
しかし、この世紀の統合がバラ色の大盤振る舞いだけで終わるかはまだ未知数です。最大の障壁と囁かれているのが、ケムチャイナが抱える海外子会社の扱いになります。欧米の規制当局による独占禁止法の審査や、各国の政治的な思惑が絡み合う中で、いかにスムーズに各国の事業をコントロールしていくかが、新組織の命運を分けるでしょう。世界を揺るがす巨大な化学巨頭の動向から、今後も目が離せません。
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