移動の常識をガラリと変える次世代交通サービス「MaaS(マース)」をご存じでしょうか。2020年は、まさにこのサービスが日本全国へ本格的に普及していく記念すべき「元年」になりそうな気配です。国内の鉄道各社が今、この新しい仕組みの導入に向けて一斉に動き出しています。
そもそもMaaSとは「Mobility as a Service」の略称です。電車やバス、タクシー、さらにはシェアサイクルにいたるまで、複数の移動手段をひとつの窓口に統合する概念を指します。スマートフォンひとつで行き方の検索から予約、そして決済までを一括で行えるのが最大の特徴です。
SNS上でも「これさえあれば、もう旅先でいくつもアプリをダウンロードしなくて済む」「財布を出さずにシームレスに移動できるのは本当にありがたい」といった、期待に満ちた声が数多く上がっています。これまで面倒だった「乗り換えごとの精算」というストレスから、ついに解放される時が近づいているのでしょう。
JR東日本が仙台や新潟で仕掛ける観光型MaaSの魅力
大手鉄道会社は、自前の線路だけでなくバスやホテル、商業施設などを幅広く展開しているため、このMaaSと非常に相性が良いと言えます。なかでもJR東日本は、主要都市で積極的な実証実験を計画しており、移動の利便性を高めることで地域活性化の切り札にしようと意気込んでいます。
同社は近く、宮城県仙台市において観光をより快適にする新たな実験を開始する予定です。スマホサイトから移動手段を調べるだけでなく、現地の飲食店や観光施設の決済までを一気通貫で完結させます。仙台国際空港や地元のタクシー、レンタカーとも密に連携する仕組みです。
さらに新潟市では、すでに2019年に実施された実験をベースに、実用化への移行を目指しています。前年の実験では3ヶ月間で約1200人が会員登録し、500円の循環バスチケットや、お得に日本酒と肴を楽しめる1600円のデジタルクーポンなどが大好評を博しました。
実際に利用した20代の会社員からは「スマホで観光のモデルルートが見られたので、とてもスムーズに巡ることができた」との声が聞かれました。目的地までのナビゲートと、現地での体験がデジタルで美しく融合している証拠だと言えます。
首都圏や伊豆、小田急の「サブスク」連携に見る未来像
JR東日本は2020年1月、東京都内でもビジネスパーソン向けにタクシーやシェアサイクルを組み合わせた実験を始動させました。今夏に控える国際的なスポーツの祭典を見据え、訪日外国人を含めた多くの観光客の足として機能させる青写真を描いています。
一方、東急はJR東日本と共同で、静岡県の伊豆エリアにて「Izuko(イズコ)」という大規模な実験を2020年3月まで実施しています。年内の実用化を視野に入れており、今後は西伊豆へとエリアを拡大する方針です。バスや鉄道が乗り放題になる周遊パスは、旅の強い味方になるでしょう。
ユニークな試みとして注目したいのが、小田急電鉄が新宿駅などで展開している飲食の定額制(サブスクリプション)サービスとの連動です。専用アプリを使えば、経路検索ができるだけでなく、駅構内の飲食店で通常500円ほどのメニューが毎日お得に食べられます。
個別で支払うよりも最大で半額程度安くなる計算ですから、仕事や学校で毎日駅を利用する人々にとっては見逃せないサービスです。単なる移動手段の提供にとどまらず、生活そのものを豊かにするアプローチこそが、これからのMaaSに求められる姿ではないでしょうか。
編集部の一言:MaaSがもたらす新しい社会への期待
少子高齢化によって沿線の人口減少という課題に直面する鉄道各社にとって、MaaSへの期待は想像以上に大きいものです。現在は採算を度外視した実験段階ですが、仕掛け人たちは「MaaS単体で儲けるのではなく、鉄道や周辺事業全体の利用者を増やす」という未来のビジネスモデルを見据えています。
筆者は、この取り組みこそが日本の地方モビリティを救う鍵になると確信しています。地方での移動弱者の足を確保しつつ、観光客をスムーズに呼び込む仕組みは、日本全体の活力を維持するために不可欠です。2020年1月27日現在のこの熱気が、社会をどう変えるのか、今後も目が離せません。
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