伊豆の美しい景色を楽しむ旅が、よりスマートで快適なものへと進化を遂げようとしています。2019年11月20日、東急とJR東日本は次世代の交通ネットワーク「MaaS(マース)」の第2段階となる実証実験の概要を明らかにしました。今回の試みは、単なる観光客向けのサービスにとどまりません。地域に住む方々の生活を支える新しい「足」としての役割を、テクノロジーの力で実現しようとする意欲的なプロジェクトなのです。
そもそもMaaSとは「Mobility as a Service」の略称で、複数の交通手段を一つのサービスとして統合する概念を指します。目的地までの最適なルート検索から予約、決済までを一つのツールで完結できるのが最大の特徴です。この革新的な仕組みが、2019年12月1日から2020年3月10日までの期間、伊豆高原駅や熱海駅を中心とした広大なエリアで本格的に試行されます。交通の利便性が飛躍的に高まることが期待されるでしょう。
高齢者にも優しい!テレビで呼べるAI相乗りタクシー
今回の実験で特に注目したいのが、下田駅周辺で展開されるAI相乗り自動車の配車サービスです。AIが乗客の目的地に合わせて最適な走行ルートをリアルタイムで算出するこのシステムは、2019年前半の実験でも高い評価を得ました。しかし、スマートフォン操作に不慣れな高齢者の方々からは改善を求める声も上がっていたといいます。そこで、誰もが使い慣れた「自宅のテレビ」から配車を依頼できる新機能が導入されました。
専用機器の開発はイッツ・コミュニケーションズが担当しており、リビングにいながらリモコン操作で手軽に車を呼べる仕組みは、全国的にも極めて珍しい事例といえます。ネット上では「これならおじいちゃん、おばあちゃんも安心」「地方の交通弱者対策として理想的」といった好意的な意見が目立ちます。移動手段を確保することは、地域コミュニティを維持する上で欠かせない要素です。この取り組みは、日本の高齢化社会における救世主となるでしょう。
観光客の利便性を徹底追求した「アプリいらず」の設計
一方で、観光で訪れる方々への配慮も抜かりありません。以前の実験ではスマートフォン専用アプリを使用していましたが、今回はあえて「ウェブブラウザ」での提供に切り替えられました。たまにしか訪れない場所で、わざわざ新しいアプリをダウンロードするのは心理的なハードルが高いものです。ブラウザ上で完結させるこの判断は、ユーザー視点に立った非常に賢明な選択だと私は確信しています。
さらに、鉄道やバスが乗り放題になるフリーパスの種類や、観光施設のチケットも大幅に拡充されました。実験期間中に約9000枚の発行を目指すこのプロジェクトは、2020年度以降の実用化を視野に入れています。テクノロジーが暮らしの中に溶け込み、移動という行為がより自由で楽しいものになる未来は、すぐそこまで来ているのかもしれません。伊豆の地から始まるこの挑戦が、日本の移動のあり方を根本から変えてくれることを切に願っています。
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