東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故からの復興を力強く推し進めるため、福島県と国などが立ち上げた「福島イノベーション・コースト構想推進機構」(略称:福島イノベ機構)は、設立から約1年が経過いたしました。この構想の取りまとめ役を担う専務理事、伊藤泰夫氏に、2019年6月12日時点の復興状況と、その先に描く未来についてお話を伺いました。
「福島イノベーション・コースト構想」は、ロボット技術や再生可能エネルギー、さらには最先端の農業技術など、これまでの被災地域にとっては未知の可能性を秘めた広範な分野を対象とする壮大な計画です。この構想は、単に震災前の経済状態に戻すだけでなく、将来に向けて持続的に成長し続ける新たな経済圏を「浜通り地域」に創出することを目標に掲げています。この挑戦は、従来の枠にとらわれない新しい価値を生み出す「イノベーション」が連続して起こる場所を創造することに他なりません。
復興の象徴となる施設整備は着々と進捗しています。特に南相馬市で県などが整備している「ロボットテストフィールド」は、イノベ機構が指定管理者として運営を担い、世界でも類を見ない大規模な研究開発拠点として期待されています。秋には中核となる研究棟の稼働を予定しており、ドローン(小型無人機)の試験や、トンネル事故、水害現場を再現した実験場など、約20の施設が2019年度末までに完成する見込みです。これは、技術革新を加速させるための、まさに世界的な舞台となるでしょう。
エネルギー分野でも大きな動きがあります。浪江町では世界最大級の「水素製造工場」が、また阿武隈山地などでは太陽光発電や風力発電の電力を送るための「送電線」が完成間近となっております。これらは、国が定めた復興・創生期間の最終年度である2020年度に向けて、本格的な稼働が相次ぐ予定です。イノベ機構の重要な役割は、これらの巨大プロジェクトと相乗効果を発揮できる関連企業の集積を、強力に推し進めることにあります。
企業誘致の現状と手応え:工場投資350件のインパクト
震災後の企業誘致状況について、伊藤専務理事は具体的な数字を挙げて説明してくださいました。原発被災地域では、補助金の2019年3月時点での累計利用状況を分析すると、約350件もの工場新増設に関する投資がすでに実施、または決定されている状況です。これは、復興への確かな一歩を示す力強い証拠であり、今後、さらに進出決定が増加することが見込まれます。
もちろん、残念ながら操業を断念したり、県外へ移転したまま戻らない企業も少なくありません。しかし、これだけの数の新たな工場投資が実現していることは、関係者の間では企業誘致の手応えを強く感じているのではないでしょうか。SNS上では、この「工場投資350件」という数字に対して、「福島の頑張りが伝わる」「新しい産業の芽が出てきた」といった、未来への期待を示す肯定的な反響が多数寄せられており、社会的な関心の高さを物語っています。
企業が持つ「技術」と、地域の「場」と「人材」を結びつけることで、この地域の経済を再び活性化させるという強い意志が感じられます。単なる生産拠点としてだけでなく、最先端の研究開発が行われる「イノベーションの現場」として福島が生まれ変わろうとしているのです。
未来を描く人材育成とチャレンジ精神
伊藤専務理事は、将来の展望として、経済を震災前の状態に戻すだけでは不十分であり、さらに継続的に伸びていく状態にすることが不可欠だと強調されました。そのためには、長期的な取り組みが求められる原発の「廃炉」に関連する分野はもちろんのこと、あらゆる分野で技術開発に取り組むことのできる「人材の育成」が欠かせません。廃炉とは、原子力発電所の運転を終了し、安全に解体・処分するまでの一連の工程を指す専門用語であり、30~40年もの長い期間を要する巨大プロジェクトです。
私たちメディアの視点から見ても、この「人材育成」への注力こそが、この構想の最も重要で、そして挑戦的な側面だと感じます。最先端の技術を生み出し、運用できる人材が継続的にこの地域に集まり、育つことによって、福島イノベ機構が目標とする「浜通りがチャレンジのしがいがあり、イノベーションが生まれ続ける場所」という未来が現実のものとなるでしょう。福島県出身である伊藤氏の、故郷の未来に対する熱い想いと、具体的な戦略が、この復興を力強く支えていると言えます。
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