2019年11月09日、俳壇には秋の深まりを感じさせる瑞々しい句が勢揃いしました。茨木和生氏の選によるこれらの作品は、日常の何気ない瞬間に宿る情緒を鮮やかに切り取っています。SNS上でも「言葉の一つひとつに季節の匂いを感じる」「情景が目に浮かぶようだ」といった感動の声が広がっており、俳句が持つ表現力の豊かさに改めて注目が集まっているのです。
高橋秀昭さんの作品では、子供たちから「鳥博士」と慕われる元校長先生の姿が描かれています。秋になり「小鳥来る」季節を迎えると、先生は観察や指導で多忙な日々を過ごされるのでしょう。教育者としての優しい眼差しと、自然への深い造詣が交差する素敵な一句です。「小鳥来る」とは、秋に北方から渡ってくる鳥たちを指す秋の季語で、生命の躍動を感じさせてくれますね。
続いて中村一雄さんの句は、梨を食す際の心地よい音に焦点を当てています。入歯であっても梨のシャリッとした食感や響きを堪能できる喜びは、まさに秋の味覚がもたらす至福のひとときでしょう。選者の茨木氏も、八十歳を超えて自前の歯を保たれている自負を覗かせつつ、この「確かな音」の描写に深く共感されています。食欲の秋を五感で楽しむ姿勢には、生への活力が溢れているように感じます。
自然との対話が生み出す感動の瞬間
加藤賢さんは、水辺に集う鳥たちの様子を繊細に観察されました。数多く飛来する真鴨(まがも)の中に、警戒心が非常に強いことで知られる鴛鴦(おしどり)の姿を見つけた時の喜びは、鳥愛好家ならずとも胸に迫るものがあります。静かな湖畔で繰り広げられる野生動物たちのドラマを、一歩引いた視点で見守る優しさが伝わってくるようです。
西田せん六さんの句に登場する「自然薯(じねんじょ)」のエピソードも非常に興味深いものです。山に自生する山芋の一種である自然薯は、秋が深まり蔓が枯れると場所が分からなくなってしまいます。そこで、あらかじめ麦を蒔いて目印にするという知恵には、長年の経験に裏打ちされた生活の美学が宿っています。自然の恵みを賢くいただく先人の営みには、現代の私たちも学ぶべき点が多いのではないでしょうか。
他にも、柿を収穫する際にふと正岡子規の面影を重ねる越前春生さんの句や、練馬の屋敷林を鵯(ひよどり)の塒(ねぐら)と捉えた金子文衛さんの視点など、多彩な秀作が並びました。どの句も、2019年11月09日という一瞬の時を永遠に閉じ込めたかのような輝きを放っています。言葉を紡ぐことで季節を愛でる俳句文化の奥深さを、ぜひ皆様も肌で感じてみてください。
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