伝説的なノンフィクション作家として知られる本田靖春氏が、メディアの在り方や「日本人論」を鋭く切り取った名著『複眼で見よ』が、2019年11月09日現在、改めて多くの読者の心をつかんでいます。本書は、昭和の終わりから平成の幕開けという激動の時代に書かれた時事エッセイを中心に構成されています。一見すると過去の記録のように思えますが、そこで語られる本質的な問いかけは、令和という新しい時代を迎えた今でも驚くほど新鮮に響くことでしょう。
SNS上では、ネットニュースの断片的な情報に踊らされがちな現代だからこそ、多角的な視点を持つことの尊さを再確認したという声が目立ちます。「タイトル通り、一つの事象を多方面から見る癖をつけたい」といった投稿が相次いでおり、情報の海に溺れそうな若い世代からも支持を集めているようです。著者の温かくも厳しい眼差しは、時代を超えて普遍的な価値を私たちに提示してくれます。
メディアの虚構と向き合うジャーナリズムの真髄
本書で特に目を引くのは、テレビ業界における「やらせと演出」の境界線や、外国人横綱の是非を巡る「小錦問題」といった当時の熱いトピックスです。本田氏はこれらの事象を通じて、マスメディアが作り上げる一方的な物語に警鐘を鳴らしました。ここで言う「ノンフィクション」とは、単なる事実の羅列ではなく、徹底的な取材に基づいて人間や社会の裏側に潜む「真実」を掘り起こす表現手法を指しています。
特に興味深いのは、著者が終始一貫して「弱者への温かい視線」を失わない点です。どれほど社会問題が複雑化しても、その中心にいるのは生身の人間であることを忘れてはいません。編集者の私から見ても、情報のスピード感ばかりが重視される昨今のトレンドに対し、一歩立ち止まって深呼吸するような深い洞察力には感服させられます。扇情的な見出しに惑わされず、物事を多角的に捉える「複眼」は、私たちが最も磨くべきスキルと言えるでしょう。
2019年11月09日に河出文庫から発売されている本書は、税込み1080円という価格以上の価値を読者に提供してくれます。メディアの信頼性が問われ続けている今、良質なジャーナリズムとは何かを自問自答するための最良のテキストです。社会の空気感に流されず、自分自身の目と心で物事を判断したいと願うすべての人へ、自信を持っておすすめしたい一冊となっています。
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