江戸の粋が宿る究極の美!「萌葱塩瀬地百鳥文様友禅染打掛」が放つ圧倒的なデザイン力

日本の伝統美が息づく作品の中でも、ひときわ異彩を放つ一着をご紹介しましょう。2019年11月25日現在、京都国立博物館が所蔵する19世紀の傑作「萌葱塩瀬地百鳥文様友禅染打掛(もえぎしおぜじひゃくちょうもんようゆうぜんぞめうちかけ)」です。深い萌葱色の生地に、鮮やかな友禅染で数多の鳥たちが描かれたこの打掛は、まさに着る芸術品と呼ぶにふさわしい輝きを放っています。

「友禅染」とは、江戸時代に確立された防染糊を用いる染色技法で、絵画のように自由で繊細な表現を可能にしました。本作ではその技術を駆使し、肩から背にかけて伝説の瑞鳥である鳳凰が雄大に羽ばたき、裾には優美な孔雀が対角線上に配置されています。時鳥や雉、さらには愛らしい目白といった「小禽(しょうきん)」、つまり小さな鳥たちまでもが、空間を埋め尽くすように意匠化されているのです。

SNS上では、このあまりに大胆で高密度な構成に対し、「現代のグラフィックデザインにも通じる衝撃がある」「これほど豪華な服を実際に着ていた時代があるなんて信じられない」といった驚きの声が広がっています。衣服を単なる身の回り品としてではなく、壮大なキャンバスに見立てて自然界を凝縮させる感性は、世界的に見ても日本の造形芸術が持つ唯一無二の個性といえるでしょう。

特筆すべきは、絵画と工芸が互いにモチーフを共有し合う「意匠の往還」という現象です。日本では絵画の中の表現がそのまま着物の模様になり、またその逆も然りという密接な関係性が築かれてきました。生活の中に美を取り入れ、変化させていく柔軟な文化があったからこそ、これほどまでに洗練されたプロダクトが誕生したのだと私は確信しています。

この打掛の根底には、17世紀前半に流行した「かぶく」という美意識が流れています。常識にとらわれず、派手な装いや奇抜な振る舞いを楽しんだ「かぶき者」たちの精神が、時を経て洗練された機知豊かなデザインへと昇華されました。見る者を圧倒するこの「傾き(かぶき)」の精神こそが、停滞しがちな現代のクリエイティブにおいても、最も必要とされている刺激ではないでしょうか。

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