中学受験を控えた11歳の少年にとって、その出会いは運命的なものでした。北陸コカ・コーラボトリングの会長を務める稲垣晴彦さんが、半世紀以上にわたり「永遠の家庭教師」と仰ぎ続けているのが、国立科学博物館の館長である林良博さんです。当時、東京大学の学生だった林さんは、長期休暇のたびに富山へ帰省し、稲垣さんの学習をサポートする家庭教師を務めていました。
単に勉強を教えるだけでなく、時には映画「007」へと連れ出してくれるなど、実の弟のように可愛がってくれたスマートな立ち振る舞いに、少年時代の稲垣さんはすっかり魅了されたといいます。SNS上でも「こんなに素敵な師弟関係が50年も続くなんて理想的だ」といった、二人の絆の深さに感動する声が数多く寄せられているようです。
林さんの背中を追いかけるように大学へ進学した後も、二人の交流はさらに深いものへと発展していきました。「奄美大島へ遊びに行こう」という誘いに乗り、現地の研究所でハブの生態調査を手伝った経験は、今でも鮮明な記憶として刻まれています。猛毒を持つハブを恐怖に震えながら押さえつけたというエピソードは、今の彼らの活躍からは想像もつかないほど躍動感に溢れています。
林さんは東京大学の副学長といった要職を歴任した後、現在は国立科学博物館の館長として、入場者数を飛躍的に伸ばす手腕を発揮されています。自身の主張を前面に押し出すのではなく、周囲が輝けるように舞台を整える「黒子」に徹する姿勢こそが、多くの人々から優れたアイデアを引き出す秘訣なのでしょう。
クラウドファンディングから学んだ事業成長のヒント
特に稲垣さんが感銘を受けたのは、3万年前の航海を再現する壮大なプロジェクトにおける資金調達の手法でした。ここで林さんは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募る「クラウドファンディング」を活用したのです。公共性の高い博物館が、民間の新しい仕組みを積極的に取り入れる姿勢には驚かされるばかりです。
この手法は、ちょうど自社グループの蒸留所改修を検討していた稲垣さんにとって、目から鱗が落ちるような革新的なアイデアとなりました。すぐに役員へ提案し、実行に移した決断力からは、トップ同士が刺激し合うことで生まれる相乗効果の大きさがうかがえます。未知の分野に挑戦する勇気は、こうした対話から生まれるのかもしれません。
現在も年に一度、富山県砺波市の自宅に林さんを招き、じっくりと言葉を交わす時間を大切にされています。全く異なる分野の話であっても、そこには不思議とビジネスを成功させるためのヒントが凝縮されています。時代が変わっても、稲垣さんにとって林さんは、人生の指針を示し続けてくれる特別な存在であり続けるでしょう。
編集者の視点から見ても、成功者と呼ばれる方々が共通して持っているのは、いくつになっても「教えを請う姿勢」であると感じます。異業種の知見を柔軟に取り入れ、自身の事業に還元する稲垣さんの柔軟な思考こそが、企業の持続的な成長を支えているのではないでしょうか。素晴らしい師との出会いは、まさに人生の宝物といえます。
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