日本の経済を支える製造業がいま、外国為替相場の変動という大きな壁に直面しています。2019年11月21日の集計によると、主要な製造業20社において、2019年10月から2020年3月までを指す「2019年度下期」の営業利益が、円高の影響だけで約2700億円も押し下げられる見通しであることが判明しました。
多くの企業が設定している「想定為替レート」は、1ドル=106円70銭、1ユーロ=119円20銭となっており、前年の同時期と比較すると大幅な円高水準にあります。この想定通りに推移した場合、企業の利益を削る要因となるのは避けられません。SNS上でも「輸出企業には厳しい冬になりそう」「製品価格への転嫁が進むのか」といった懸念の声が広がっています。
自動車や精密機器を襲う「為替感応度」の脅威
ここで注目したいのが「為替感応度」という指標です。これは、為替が1円動いた際に利益がどれだけ変化するかを示すものですが、輸出比率の高い自動車業界ではその数字が経営に直結します。例えば、トヨタ自動車ではドルとユーロの変動を合わせると約1400億円ものマイナス影響が見込まれており、巨大企業といえど無視できない規模の打撃となるでしょう。
また、対ドルの影響が限定的な企業であっても、ユーロ安の波が収益を圧迫するケースが目立ちます。ソニーやニコン、セイコーエプソンといった精密機器・家電メーカー各社も、ユーロ安によって数十億から百億円単位の利益減少が予測されています。特定の通貨だけでなく、グローバルに展開する企業ほど多方面からのリスクにさらされているのが現状です。
多角化するリスクと新興国通貨の動向
さらに、現代の日本企業にとって見逃せないのがアジアや南米などの新興国通貨の動きです。例えばスズキは、主力市場であるインドやパキスタンの通貨安により、合計で約60億円の利益が削られる見通しとなっています。これは、日本企業の進出先が多角化したことで、ドルやユーロといった主要通貨以外の変動リスクも無視できなくなったことを物語っています。
編集者の視点から言えば、為替に左右されない強固な収益構造の構築こそが、今の日本企業に求められる喫緊の課題ではないでしょうか。単に「円高だから苦しい」と嘆くのではなく、地産地消の拡大や付加価値の高い製品開発など、外部環境に翻弄されない戦略が試されています。投資家にとっても、この下期の決算発表は各社の真の「地力」を推し量る重要な指針となるはずです。
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