私たちがコンビニで何気なく手に取る飲料。その一本には、実は私たちの「脳」も気づいていない深層心理が隠されているかもしれません。飲料大手のダイドードリンコが2019年3月にリニューアルした「大人のカロリミット」茶シリーズが、まさにその好例として注目を集めています。
この商品の開発では、消費者の脳波を測定して「心地よさ」を数値化する「ニューロマーケティング」という手法が取り入れられました。これは脳科学の知見を市場調査に応用する専門技術で、言葉では説明できない「なんとなく好き」という感覚を、客観的なデータとして可視化する試みです。
「持ちやすさ」の正体は脳が知っている
開発の舞台となったのは、余計な刺激を排除した真っ白な測定施設です。そこでモニターがペットボトルを握った際の脳の電気信号を分析した結果、中央がわずかにくぼんだ形状が、脳にとって最もリラックスできるデザインだと判明しました。この科学的アプローチは見事に的中したといえます。
リニューアル後の販売実績は前年比1.5倍という驚異的な伸びを記録しました。SNS上でも「手に馴染む感じがして落ち着く」「無意識にこれを選んでしまう」といったポジティブな反応が相次いでいます。コーヒー飲料が苦戦を強いられる中で、脳科学がヒットの救世主となったのです。
かつて、一瞬だけメッセージを流して潜在意識に働きかける「サブリミナル効果」が話題になりましたが、現在はその有効性に疑問符が付いています。これに対し、最新のニューロマーケティングは「操る」のではなく、本音を「読み解く」ことで、より満足度の高い製品を届ける手段となっています。
広がる脳科学の活用と今後の課題
2019年12月04日現在、この動きは飲料業界に留まりません。2019年10月にはLINEが脳血流測定を調査に導入すると発表したほか、資生堂も化粧品の使用感を評価する新手法を開発しました。企業の関心は高く、マクロミルなどの調査大手も専門企業を傘下に収めるなど、体制強化を急いでいます。
しかし、脳波ですべてが解決するわけではありません。ある企業が脳波を基にデザインを変更したものの、実際の販売数が落ち込んだ例もあります。買い物はライバル商品との比較や価格設定など、多くの要素が絡み合う複雑な行為です。脳のデータと実際の購買をどう結びつけるかが、今後の大きな鍵でしょう。
編集者としての私見ですが、データに頼りすぎるのは危険ですが、消費者の「言語化できない不満や喜び」を汲み取る姿勢は素晴らしいと感じます。作り手の独りよがりではない、真に「心地よい」商品が溢れる未来は、科学と感性の融合によって形作られていくに違いありません。
コメント