2019年6月26日、ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)が全国最後の支部として東北支部を立ち上げ、本格的な活動を開始しました。設立講演を終え、東北地方へのインバウンド(訪日外国人観光客)誘致と課題解決に乗り出すにあたり、支部長に就任された松崎哲士郎氏にお話を伺いました。東北は、外国人宿泊者数が100万人を超え、訪日客が増加している好調な地域ですが、松崎支部長は、この勢いをさらに加速させるための戦略を練っています。
東北を訪れるインバウンドの特徴として、松崎支部長は「訪日のリピーターが多い」点を挙げられています。東京や大阪といった、いわゆるゴールデンルートをすでに体験した人々が、より魅力的で奥深い日本の姿を求めた結果、東北の豊かな自然景観などに注目し、来訪者が増えている状況でしょう。外国人宿泊者数の伸び率は大きく、今後ますます成長が期待されています。特に東日本大震災の復興事業が一区切りついたことで、東北の観光には大きな伸びしろがあると見ています。
しかしながら、インバウンド誘致が好調な一方で、受け入れ体制には依然として課題が残されています。単に多言語表記を整備するだけでなく、東北でなければ買えないような「東北らしい商品」のラインナップが手薄であることが指摘されています。ブランド品や高額な家電製品は東京などの大都市で購入する傾向があるため、東北独自の魅力的な商品、すなわち訪日客が東北で何を求めるのかを深く考え、提供していく必要性があるでしょう。ここで言う「東北らしい商品」とは、その土地の文化や特産品を反映した独自性の高い商品群のことです。
その具体例として、持ち帰りが難しい国もある果物ではなく、現地で体験できる「果物狩り」が高い人気を集めているそうです。例えば、宮城県の山元町や利府町産のイチゴや梨などを駅で試食してもらい、そこから果物狩り体験へと誘導するといった工夫で、より深い観光体験を提供できる可能性が生まれます。また、現場での接客対応への慣れも課題であり、中国語などの多言語や異文化を理解できる従業員がいる家電量販店の例を参考に、JSTOに参画する旅行会社や流通企業などが業種を越えて連携し、訪日客への対応力を高めていく考えです。このような官民・業種の垣根を超えた連携こそが、東北インバウンドの課題解決の鍵になるでしょう。
今後の目標としては、中国の旧正月である春節の大型商戦や、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックといったビッグイベントを見据えた取り組みを進めています。特に訪日客にとって利便性の高いキャッシュレス決済の普及は喫緊の課題です。QRコード決済などを含め、どのような種類の決済手段を導入すべきか、業界全体が一丸となって検討していく方針です。ここで言う「キャッシュレス決済」とは、現金を使わずに代金を支払う方法全般を指し、訪日客の購買意欲を向上させる重要な要素となります。
さらに、商業施設への翻訳機の導入や、ホテルと連携した宿泊客への特典クーポン配布といった具体的な販促策も検討中です。インバウンドは1つの県だけでなく、複数の県を周遊する傾向が強いため、周遊性を高める販促展開の方法についても、より一層注力していくとのことです。松崎哲士郎支部長は1982年に東京大学法学部を卒業後、旧国鉄に入社し、JR東日本の執行役員横浜支社長などを経て、2017年から仙台ターミナルビル社長を務められている人物です。鉄道・流通の両面を知る松崎氏のリーダーシップのもと、東北独自の魅力で訪日リピーターを惹きつける「東北モデル」の構築に期待が高まります。
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