ポケベル終了の裏側に隠された「命を守る」再出発!280MHz電波が防災の未来を切り拓く

1980年代から90年代にかけて、外回り中の営業マンの頼れる相棒であり、女子高生たちの絆を深める魔法のツールだった「ポケットベル」がついにその役目を終えます。2019年9月30日、東京テレメッセージが首都圏で提供してきた無線呼び出しサービス「ページャー」が惜しまれつつも終了を迎えました。SNS上では「青春の象徴がなくなるのは寂しい」「084(おはよう)なんて送ったのが懐かしい」といった、かつての熱狂を振り返る多くの投稿が寄せられ、一つの時代の終わりを象徴しています。

しかし、単にサービスが消えるわけではありません。実はこのポケベルを支えてきた強力な電波が、私たちの命を守る「防災システム」として華麗なる転身を遂げていることをご存知でしょうか。清野英俊社長は、不採算となったポケベル事業から撤退する理由を、人命に関わる重要な事業へ経営資源を集中させるためだと語ります。その情熱の先にあるのが、自治体向けの「280MHzデジタル同報無線システム」なのです。

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建物を突き抜ける強靭な電波!防災無線に革命をもたらす280MHzの正体

この新システムが活用する「280MHz(メガヘルツ)帯」という電波には、驚くべき特性があります。ここで言うメガヘルツとは、電波が1秒間に振動する回数を示す単位ですが、この周波数帯の波長は約1メートルと、一般的な住宅の窓枠に近いサイズです。そのため、驚くほど室内に電波が入り込みやすく、従来の防災行政無線で課題だった「家の中にいると声が聞こえにくい」という致命的な欠点を鮮やかに解決してくれるのです。

従来のシステムが使用する60MHz帯は、波長が約5メートルと長すぎるため、建物に阻まれやすい性質がありました。対して280MHz帯は、迷路のような建物内でもスムーズに届きます。さらに、送信局の出力を従来の約25倍にあたる250ワットまで高められるため、広範囲にわたって確実に情報を届けることが可能です。まさに「確実に届ける」ことに特化した、ポケベル由来のタフな通信技術と言えるでしょう。

実際に導入された自治体では、防災ラジオ型の受信機が配布されています。これは文字データを受信すると同時に、即座に合成音声へと変換し「〇〇地区で火災が発生しました」といった具体的な指示をアナウンスする仕組みです。2011年3月11日の東日本大震災を経て、屋外スピーカーだけでは不十分だと痛感した多くの自治体が、この「家の中でしっかり鳴る」システムに熱い視線を送っています。

苦難の歴史を越えて!社会インフラとしての新たな挑戦

ここに至るまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。東京テレメッセージは1999年に一度経営破綻を経験し、その後も運営会社の変遷や債務超過など、幾多の荒波に揉まれてきました。転機となったのは2012年7月、投資ファンド出身の清野氏が社長に就任し、防災事業を経営の柱に据えたことです。かつての「遊びのツール」の基盤を「命のインフラ」へと再定義したこの戦略は、見事に功を奏しました。

2013年度から2018年度までの間に約30の自治体が導入を決め、2019年度中にはさらに20の自治体が加わる予定です。清野社長のトップセールスと、現場の切実なニーズが合致した結果と言えます。かつて誰かを呼び出すために使われた電波が、今は避難を呼びかけるための最強の武器へと進化したのです。この技術転換のストーリーは、古くなった技術を切り捨てるのではなく、その強みを活かして社会貢献へと繋げる素晴らしいお手本だと感じます。

今後の展開として、2020年度を目途に英語翻訳機能を備えた新型受信機の提供も計画されています。多様化する現代社会において、外国人居住者にも等しく安全を届ける試みは、非常に意義深いものです。私は、このように既存の資産を創意工夫で蘇らせる企業の姿勢こそが、日本の防災力を底上げしていくのだと確信しています。ポケベルという懐かしい名前は消えても、その魂はこれからも私たちの暮らしを静かに、そして力強く見守り続けてくれるはずです。

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